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	<title>NOVEL - Haben Sie heute Zeit?</title>
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	<description>このサイトはいまのところオリジナル小説サイトです</description>
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		<title>17.生徒会会計明川望は出不精</title>

		<description>　明川や笹井たちのマンションがある最寄…</description>
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			<![CDATA[ 　明川や笹井たちのマンションがある最寄駅が、俺の最寄り駅の二つ前で有難かった。定期圏内。それから、駅から歩いて十分弱。少し古びていたがそれでもしっかりとしたマンションに彼らは住んでいるらしい。二人とも生まれた時からそのマンションだったらしく、幼い時は一緒に遊んでいたと言う。一緒に遊んでて成長した姿が全然違うのには驚きだけど。チャラくて現代高校生男子を絵に描いたような笹井と、此方もある意味現代高校生を絵に描いたような…明川。明川はどちらかと言うと、高校生クイズとかに出てそうな部類の人物だけど。
「俺んちは三階だけど、明川は四階なんだ。」
「へー。」
　笹井はそう言いながらエレベーターの四のボタンを押す。演劇部で必要なものを忘れたと言ってたので、帰りに三階を寄って帰るのだろう。エレベーターが開くと、彼は前を歩く。そして、一番端の部屋のインターフォンを押した。
　ピンポーンと音が鳴り響き、中からゴゾゴゾと音が鳴る。そして、暫くすると、ガチャリと受ける音がした。
「はい。」
　明川の声が聞こえ、笹井は言う。
「おーい、生きてるかー。」
「隆一か。」
　彼の落ち着いた声に笹井は言う。
「お前無断欠席したんだろ。上内心配してたぞ。取り敢えず開けろ。」
　その言葉に、返事はなく。扉の向こうで歩く音やらガサガサと音が聞こえ、扉の鍵が開けられる。そして、ゆっくりと玄関が開く。
「おはよう。」
　目の下の隈、少し伸びた無精髭、飛び跳ねた髪。思わず俺は眉をひそめた。笹井はうわあ、とあからさまに嫌な声を上げた。
「こんにちは、だよ。」
「今何時なんだ。」
「五時だよ。昼のな。」
「え。」
　時間感覚がなかったってか。笹井は無理矢理扉を開く。少しふらっとした彼を俺が支えて、玄関の奥に押し込む。笹井も中に入ると扉の鍵を閉めた。
「え。え。」
「いいからいっぺん中入って話そうか、この引きこもり。」
　最近斎藤と一緒に居ることが多いせいか、ここまで通るクリアな声を聞いたのは久しぶり。笹井の大きな声に明川は耳を押さえながらああと呟いた。
「やらかした。」
「お前言っとくけど二日やらかしてるからな。」
「えっ。」
　コイツが恋煩いはねえよなと思ったけど、俺の勘違いだったらしい。来てなかった五人の中で四人がそうなら、コイツもそうかと思ったけど。


　散らかしていたリビングを俺と笹井で掃除をする。まあ、荒れていたのは新学期になったくらいの大体一週間。酷かったのがここ二日ってくらいだ。洗い物と洗濯機を回したらなんとか落ち着いた。笹井は思いっきり明川を浴室へ押し込み、手慣れたように明川の部屋から服を用意する。それほど仲良くないと思っていたけど、漫画みたいな幼馴染っぷりだな。いや、部屋のつくりを知っているだけか。
　何故か家主じゃなくて、笹井に入れてもらった茶を飲みつつ俺はソファーにかける。笹井も隣にドカリと座ってお茶を飲んだ。
「手慣れてるな。」
「うちの親、家に居ないことが多いから、よくここに預けられたんだ。あと、この前夏休みの宿題写させてもらいに来たし。」
「なるほど。」
「食器の位置とかは変わってなくて驚いたけど。」
「あはは。」
　なるほど。

　シャワーを浴びて、髭も剃って、ジャージとTシャツを着た明川が出てくる。なんというか、コイツはいつもあか抜けないと思っていたけど、さっきよりかはマシだ。
「あ、お茶は。…って勝手に入れたのか。」
「お前の分も用意してやるから早く座れ。向こう。」
　笹井は勢いよく向かい側のソファーを指さす。驚いた明川にもう一度指を刺し直すと、彼はオズオズと座った。
「悪い。」
「悪いと思ってるなら、中間もよろしく。」
「俺、コーヒー。」
「悪いと思ってねーよな。」
　学校で会話している姿とかほとんど見ないしタイプが違い過ぎるから、仲良くないのかと思ったけど普通に幼馴染している。笹井に用意してもらったコーヒーを一口飲んで、明川はハアとため息をついた。そして、俺の方を見た。
「何。」
「何じゃねえよ。お前。よく生きてたな。なんで学校来なかったんだ。」
「うちの父親、今ドイツの大学に出張中なんだが、そこで数学の本買ったとかで送ってくれたんだ。」
「あーなるほど。読んでたら時間がいつの間にか過ぎてたと。」
「その通りだ。不思議だよな。」
「不思議だよな、じゃねえ。」
　明川は全力で明川だ。俺は大きくため息をついた。
「で、夏休みはなんで生徒会室来なかったんだ。」
「前半は大学の講習って言ったよな。」
「それはいいよ。後半。」
　前半は何処かの大学の高校生に向けての講習があると言っていた。その時期は田代もオープンキャンパスがあったし、他のメンバーが来ないことに余り疑問は持っていなかったんだ。来れない理由とかメールくれたし。明川は言う。
「多分メールしたよな。」
「した。連絡来なかったよな。」
「それは携帯壊したからなんだ。新しいの買ったけど、連絡帳ちょっとずつ写してて。」
「そういうのって、なんか機械ですぐにやってもらうもんじゃねえの。」
「え、そうなのか。」
「あーもういいよ。」
　携帯壊したのはわかった。それから明川は目を反らす。
「あ、いやごめん。その時期は……隆一の相手か、数学の問題かで忙しかった。」
「それ忙しいって言わないよな。あと原因お前か、笹井。」
　ソファーに置いていたクッションで隣に座る笹井の頭を殴った。痛くないだろうが、これくらいさせろ。

　明川は髪をタオルで拭く。それから下を向く。
「ごめん。本当にごめん。文化祭準備あるのに。」
「わかってるならいいんだよ。これからマジで働けよ。」
「わかった。…というか、今ここに居ていいのか。他の皆は。」
　他の皆という言葉に明川はサッと表情が暗くなる。
「岩崎とか泉とか怒ってるよな。俺アイツらに白い目で見られたら心のダメージ半端ないんだけど。あと、俺金森の嫌味も耐えられない。土下座した方がいいのかな。というか、なんで俺は生徒会のこと頭になかったかな。」

　騒ぎだした彼を見てどうにも怒れなくなる。根は真面目なのだ。好きなことに一生懸命だが、突然周りを見てあれこれでよかったのかなとか言いだす。真っ直ぐなのかなんなのかわからない。…ただ、余り周りの状況を見ていないせいか、今の生徒会の状況は全然知らないらしい。なんというか、明川らしい。
　笹井は思いっきり明川を睨みつけた。
「そんだけサボってんだからとっとと生徒会室行って怒られて来い。土下座でもなんでもして仕事しろこのバカ。」
「…隆一の癖にまともなことを言っている、だと。」
　笹井を見て絶句する彼を見て俺はハアとため息をつく。なんだ、いつも通りならそれでいい。俺はお茶を飲み干して、机の上に置いた。
「おい、明川。今から制服着て学校行くぞ。明日からとか余裕ぶっこいてられるほど生徒会は暇じゃないんだ。」
「だよな。着替えてきます。」
　そう言って、彼は自分の部屋へ向かう。

　笹井は俺のコップと自分の飲んでいたコップ、あと明川のマグカップを手に取り流し台へ持って行く。
「あ、ありがと。」
　俺がそれだけ言うと彼は大きくため息をついた。
「アイツの親が帰ってくるまで、俺が朝呼びに行った方がいいんだろうか。」
　見た目は物凄くチャラいけれど、演劇部に関しては真面目だ。裏方の代表なんてしているくらいなんだから。笹井の言葉に俺はため息をついた。
「頼む。」
「…俺そこまで甲斐性でもねえよ。」
「いや、マジで。」
「わかった。あとでアイツの親にチクって叱ってもらおう。」
「どうぞ、ご勝手に。」

　笹井に文句を言っている風紀委員のみんなに言いたい。明川よりも断然コイツの方が生活力が合ってまともだぞ。


＊＊＊
明川　望・あきかわ　のぞむ
生徒会会計、二年。

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		<dc:date>2018-10-20T00:05:51+09:00</dc:date>
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		<title>16.金森と斎藤</title>

		<description>　生徒会室へ行くと、そこには風紀委員の…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 　生徒会室へ行くと、そこには風紀委員の斎藤隼太先輩しかいなかった。いつも座っている上内先輩がいない。
「失礼します。斎藤先輩、上内先輩は。」
「…明川連れ戻すって。」
「ああ。なるほど。」
　僕はそう言って、席に座る。明川先輩とは、生徒会会計のちょっとよくわからない人である。大の数学好き。それ以外にも理系は物凄く好き。会計という役職は、まあ確かに予算の計算とか多いけれど、それに惹かれて立候補したらしい。いや、普通の雑務もあるって。計算に関しては、それ暗算で出来るのすごいねってくらいは出来る。あの理系チートの称号を欲しいがままにした先輩が、幸永昭一郎に惚れたなんだの言われているのには正直驚いた。そう言えば、僕が昭一郎の近くで居た時、明川先輩居たっけ。いなかったよな。
「田代先輩はまだ柊のところですか。」
「らしい。」
「じゃあ、昭一郎のこと聞きましたか。」
「いや。」
「今日一時間だけ生物部に顔を出すって。もしかしたら帰って来れないかもしれないけど、頑張って帰ってくるって。」
「ああ。」
　昭一郎が生物室に行くと言うことは、自ら、居場所を明かすようなもの。生徒会室にいることはまだあの取り巻きたちは知らないけれど、生物室なら知っている。大体取り巻きの中に生物教師、松倉譲の姿もあるから。アイツが一時間で戻ってくるとは初めから思っていない。押しに弱いアイツが僕を振ったことでさえ、驚きなのに。
　斎藤先輩はいつも通りもくもくと仕事をしている。正直人数が居ないとやる気が起きない。だが、風紀委員の仕事もあるのに、ここに来てくれている彼を見ているとやらざるを得ない。それに帰って来てノルマが終わって居なかったら上内先輩に怒られる。
　いつも通り筆記用具を机の上に並べてたところで、ふと斎藤先輩の方を見る。彼は昨日鎌田先輩に大量の風紀委員のファイルを渡されて、それを整理しなくてはいけないと言っていた。なのに、やっていることは、生徒会の仕事。
「あれ。風紀委員の仕事、いいんですか。」
「ああ。」
「昨日戦力になれないって嘆いてたのは誰ですか。手伝ってくれるのは有難いですが、やることやってなくて怒られるのは生徒会なんですよ。」
　嫌味を込めてそう言うと、彼はいや、と小さな声で言う。
「頑張ったら、終わる。」
「じゃあ、今頑張って下さいよ。…大体帰宅してからするにしてもいつやるんですか。」
　大体生徒会室を絞めるのは八時を回っている。僕も日課の勉強を睡眠時間削ってやっているのに、この人は勉強の時間も取れないだろう。
「金森、心配してくれてんの。」
　ジッと此方を見られる。斎藤先輩は真っ直ぐ僕の目を見た。前から思っていたけれど、何故上内先輩と斎藤先輩が仲がいいのかわからない。常に無表情で何に興味があるのかとか何が好きなのかとかそういうこと一切わからない。今だって、真っ黒の彼の目は吸い込まれそうなほど、ただの黒だった。笑ったりとかするのかな。
「違いますよ。」
　何故か心の内まで見られているような気がして、目を反らした。長袖のワイシャツの袖のボタンをあけて、袖をまくりあげる。書き仕事が多いため、シャーペンの芯のカスで黒く汚れたくなかったし。
　これほど静かな生徒会室、初めてかもしれない。選挙があって、すぐくらいは、結構騒がしかったのだ。岩崎会長が騒いで、それに上内先輩がツッコミを入れる。仕事をしたいと騒ぐ柊を田代先輩が宥めて。ああ、僕はいつも岩崎先輩に嫌味を言いまくって怒りを買っていたか。泉先輩はマイペース過ぎたな。明川先輩はマイペースだけど、急に謝りだしていた。確か。
正直振られたばかりで、昭一郎がここでいるのは気まずかった。それを上内先輩に言えばきっとなんとかしてくれるだろうけど、敢えて言わない。先輩は僕の優秀さを買ってくれているのに、そんな我儘言えない。それに、先輩のせいで大泣きして、仕事漬けの毎日を過ごしていると不思議と吹っ切れたような気がする。先輩に謝りに行くまでは、少しは失恋のショックに浸らせろと思ったけど、浸る前に日常にシフトチェンジしていた。


　扉をノックする音が聞こえる。斎藤先輩は、反射的に今持っている書類の上に風紀委員のファイルを広げる。返事をする前に、扉が開く。せめて名前言えよ。と思っていると、そこに現れたのは昨日の今日で風紀委員長、鎌田先輩。
「せめて、声をかけてから開けるのがルールじゃないですか。」
「それはすまなかった、生徒会庶務金森史くん。」
　彼の言い方はとても嫌味。僕は軽くため息をついた。彼は穴を探すように周りを見渡す。
「上内くんは。」
　その言葉に、斎藤先輩は答える。
「演劇部に呼ばれてそちらへ行っています。岩崎もそちらです。」
「ああ、そうだったか。ここに居ないと思ったらそういうことなら仕方がない。」
　え、演劇部とか言っていいのか。後で調べられたら困るんじゃないか。そう思ったのだが、彼は随分堂々としているので、黙っておくことにする。すると、鎌田先輩は斎藤先輩の隣の席に座る。そして、斎藤先輩の方を見た。
　なんだ。生徒会に何か用事があったんじゃないのか。斎藤先輩も不思議に思ったのか、ゆっくりとそちらに目を向ける。

「斎藤。お前は俺に何か黙っていることがあるだろう。」
　僕は思わず奥歯を噛みしめた。何か要らないことを言ってしまいそうで、でも黙っておくために。斎藤先輩は表情すら変えずに彼の方を見る。紙を捲る音すら聞こえない室内において、緊張感に溢れていた。彼は口を開く。
「あ、八月三十一日が誕生日でしたっけ。誕生日おめでとうございます。」
　僕は思わずズルッと滑って机の上に頭をぶつけた。ニコニコと笑っていた鎌田先輩もポカンと口を開いている。
「いや、確かにそうだが。」
「そんなに俺に誕生日おめでとう、と言って欲しかったんですか。」
「違うわ、バカタレ。そういうことじゃないわ。」
「俺の誕生日は六月ですよ。」
「誕生日じゃない。お前は何故そっちだと思った。」
「じゃあなんですか。いくら俺が風紀委員だとしても秘密が一つや二つ。」
「個人的な話じゃない。お前おちょくってるだろ。」
　呆れたような彼に僕はぶつけた額を押さえながら起き上がる。斎藤先輩はふうと一息ついて彼の方に体を向ける。
「何の話ですか。」
「もういい。」
　鎌田先輩は立ち上がる。なんというか、斎藤先輩が生徒会に庇って嘘をついていたということは突きとおせたようではある。彼はスタスタと扉の方へ歩いて行く。
「あれ。それだけなんですか。貴方受験生でしょう。いいんですかそんな時間の使い方で。」
「煩い。俺は推薦で合格済みだ。」
「それは失礼。」
　嫌味を言ったつもりだったのだが流石風紀委員長。完璧すぎて腹が立つ。彼は、扉に手をかける。と、ふと思い出したように振り向く。

「斎藤。」
「はい。」
　斎藤先輩はいつも通り返事をする。疚しいことなんて何もないように。
「黙っておくのが友情ではない。」
「何の話ですか。」
「仮にお前が黙っていることで生徒会が生き延びたとして、本当にそれは正しいのか。」
「…正しい、とは。」
　鎌田先輩は静かに斎藤先輩を見降ろした。

「また変なものに巻き込まれて、身動きが取れなくなるのはお前だ。考えて行動しろ。」

　また。とはどういうことだ。
　鎌田先輩は歩き出す、扉を開けて、外へ出る。その彼に向かって、斎藤先輩は言う。

「言われずとも。」

　この会話が何を表しているかわからないが、斎藤先輩はいつもよりもピリピリしていた。無表情には変わりないけれど、どうにも儚くて消えてしまいそうな横顔。閉じてしまった扉を暫く眺めて、それから彼は仕事に戻る。風紀委員のファイルを閉じて、シャーペンを握りしめる。
　僕に何も聞くなと言う風に、いつもよりも下を向いていた。


　昔何に巻き込まれたのか。風紀委員長は何故そのことだけを言いに来たのか。昨日来た時も思ったが、鎌田先輩は斎藤先輩のことを同じ委員会の後輩、という以上に心配しているように思う。大体斎藤先輩が風紀委員なことも不思議だ。この前はなりゆき、と言っていたのだが、さっきの二人を見ればなりゆきと言うにはいろいろありそうな。
　僕は考えつつも手を動かす。時計の針の音と紙にペンの芯を擦りつける音。あと時たま紙を捲る音が聞こえるくらい。遠くから野球部の声を出す音と、吹奏楽部の音。

　彼が監査に来た時のことを僕は知らない。知らないけれど、来たら何故か上内先輩と田代先輩に加え、斎藤先輩がいて、昭一郎もいた。監査と聞いていたけれど、彼は随分生徒会に協力的で、雑用をやってくれるだけでなく、風紀委員に嘘まで報告している。岩崎会長が戻ってきていることにしてくれたり、仕事は順調に終わっていると報告していたり。戻ってきたのは今のところ俺だけだし、仕事だってある意味順調だけど毎日修羅場だ。こんな面倒臭い仕事、投げ出して鎌田先輩にチクればいいものを。
　上内先輩に恩でもあるのだろうか。同じクラスだとは聞いていたけれど、それほど仲が良さそうには思えない。二人の会話、と言うよりも上内先輩と田代先輩の会話に一言添えるくらいがいつも通り。基本的に無表情で何を考えているかわからない。大体、気が合うのだろうか。上内先輩は結構喋るイメージだけど、斎藤先輩は喋るのでさえ面倒臭がる。少し前風紀委員の山下先輩に「声を張れ」と怒られているのを見た。

「あの、斎藤先輩。」
　彼は此方を見る。
「さっきの、なんだったんですか。」
　僕の言葉に、彼は面倒臭そうに口を開く。喋ろうとして、声が出なかったのが、少し咳ばらいをした。
「…知らない。」
　随分カスカスの声で彼は言う。
「大体、なんでここまで生徒会の手伝いしてくれるんですか。有難いとは思いますけど、…その、…いいんですか。」

　僕も含めて、責任を果たせない生徒会なら総選挙されてもしょうがないと思う。田代先輩や上内先輩は嫌だと言うだろうけれど、風紀委員の立場ならそう思うのも当然。学校の為にならないここが生き残ることに意味を感じていないだろう。僕だって文化祭を成功させたい気持ちはある。でも、その後の解散は仕方がないと思う。総選挙するにしても、どうせ文化祭後。
　彼はジッと僕の目を見て、それから言う。
「金森には関係ない。」
「関係ないって。」
　僕はシャーペンを握りしめた。関係ないってどういうことだ。怒鳴ってやろうか。

　廊下を走る音、ガラリと扉が開き、そして、誰かが滑り込むと扉を閉める。
「幸永昭一郎。無事、帰還しました。」
　大きな声。満面の笑み。綺麗に決まった敬礼。

　僕は思わず机に額をぶつけた。急に入ってきた人にとって、室内の空気なんてわかるはずないのも無理もない。
「金森くん見てみて。僕ちゃんと撒けたよ。やればできるもんなんだね。」
　楽しそうなことだ。僕の肩を揺らす彼の手を思いっきり振り払う。
「煩いな。」
「あれ、上内先輩は。」
「明川先輩呼びに行ったよ。…たく。」
　そう言って、書類に向き直る。斎藤先輩に文句を言ってやろうかと思ったが、もうやめておこう。昭一郎に説明するのも面倒臭いし。と、斎藤先輩は静かに告げる。
「幸永。廊下走るな。」
「あ、ごめんなさーい。」
　注意の声小さすぎて注意する気あるのだろうか。


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		<title>15.たまには理由が違う</title>

		<description>　昼休みの時間、斎藤は大体俺と弁当を食…</description>
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			<![CDATA[ 　昼休みの時間、斎藤は大体俺と弁当を食べている。今までは彼は一人で食べたり学食行ったり風紀室に呼ばれていたのだが、文化祭準備のために一緒に食べてくれていた。のだが、俺はうわあとため息をつきたい。
　昨日貰ってきた資料をジッと眺めながら、弁当を食べる。たまに、何か文字を書き込んでいく。おそらく解読作業だ。汚い字が読みづらいから先に解読しておこうと言うもの。
「そんなに読みづらいのか。」
「〈あ〉と〈め〉って読みづらいし、〈う〉と〈ろ〉が似てることなんて初めて知った。」
「…というか、今週末までなんだろ。放課後そっちやりゃいいじゃねえか。元々お前の仕事はそっちだろうし。」
「それで、生徒会室の書類の山が終わるとは思わない。」
　彼の言葉に俺はなんとも言えなくなる。なんというか。こいつは行動的じゃないけど、人のためなら熱心だよな。高一の時もクラスが同じだったが、クラスメイトの少し面倒な仕事を手伝っていたり、先生に何かを頼まれていることも多い。何を考えているかわからない表情しているから話すまでは、こっちのこと興味ないのかなって思うけど。話してみれば、意外といろいろなところを見ている。気付いたうちに主張しろよってツッコミ入れたくなるけど。
　彼は持って来た数枚の解読作業を終えて、整える。それを机に置くと、弁当の残りを食べ始めた。
「いや、今日辺り、明川をなんとしても連れ戻すし。元々お前に生徒会の仕事させてるのが間違いだし。」
「明川今日も休みって、池井が。」
　明川は確か池井のクラスメイトだ。けど、欠席。昨日もそうだったけど、もしかしたら風邪でもひいているのだろうか。俺の表情を読み取ったのか、斎藤は静かに言う。
「理由、わかんないんだって。」
「え。」
「池井が担任に聞いてみたら連絡すらないって。どういうことだろう。」
「無断欠席なのか。」
　何か可笑しい。アイツは確かにずぼらなところもあるけれど、真面目っちゃ真面目だし。欠席連絡もなしに欠席って。家で倒れてるんじゃ。確か、アイツの両親は大学の研究者って言っていた。もしかしたら、二人ともどっかの学会に行っていて気付いていないとか。

「笹井。」
　たまたま俺と斎藤の近くを通りがかったクラスメイトを呼び止める。彼は、笹井隆一。明川とは同じマンションに住んでいて、高校の受験勉強も明川が笹井を見てやったと言う。ただ、この二人、そこまで仲良いわけじゃないが。
「明川、生きてるか。」
「望か。」
「そう。」
　振り向いた彼にそう尋ねると、彼はさあ、と答える。すると、斎藤の顔を見てうわあと顔を歪める。この男、校則を破りまくっているのだ。見た目で言うとピアスをしているし、髪の毛は金髪。ちなみに、金髪を地毛と言い張っているが、「染めなきゃ」とぼやいているのを何度か聞いたことがある。チラリと斎藤を見ると彼は小さな声で言う。
「ピアス。中着。あとシャツのボタン締めて、入れろ。」
「うるせえよ。なんで、お前に言われなくちゃなんねーんだよ。」
　確かにシャツの中の中着、派手な色してるしな。開襟シャツがもう羽織ものみたいに見える。
「いや、笹井。斎藤ほど静かに指摘する人いないから。うるさくはないだろ。」
「それもそうか。」
　ケロリとしている彼に斎藤は表情すら変えずに弁当を食べる。ウチのクラスが平和なのは、きっと斎藤の注意の声が小さいからだろう。いや、斎藤のいないクラスを体験したことないけど。笹井は俺たちの近くの席に座ってこっちを向いた。
「望の話だっけ。」
「そ。今日も欠席って聞いたけど、無断なんだろ。なんでか知らねえかな。」
「あー…俺も会ったの夏休みの終わりなんだよな。宿題写させてもらおうかと思って。だから、新学期になってからは知らない。」
「絵にかいたような寄生っぷりだな。」
「いや。俺とアイツの会話なんて基本そういうのだけだぞ。アイツとはなんか会話のテンポ合わねえんだよ。」
　自慢げに主張しているけど、要するに利用しかしてないってことだからな。結構酷いぞお前。彼は明るく言う。
「で、何の話だっけ。望の。」
　俺は苦笑いをする。
「じゃ、お前は新学期になって会ってないんだな、明川。」
「あ、会話してないけど一昨日会った。」
「え。」
　最新に会ったのって俺じゃないかと思ったが、流石ご近所さん。見かけている。
「母さんに醤油買って来いって言われてスーパー行ったら、かぼちゃ掴んでなんかぼそぼそ言ってた。気持ち悪いし声かけずに帰ってきたけど。」
「え、何言ってたの。」
　アイツの奇行は今に始まったことじゃない。
「なんかひたすら数字。」
「え、昨日今日休んでるのってもしかしてアイツのいつもの病気。」
「病気って何。アイツ持病あったの。」
　笹井ってホントに宿題とか勉強でしか明川にお世話になってないんだな。俺はなんとなくゲンナリしてしまう。
「アイツってなんか知らんけど物凄く数学好きじゃん。」
「いや。俺アレに触れたらダメだと思って触れないようにしてる。」
「笹井、正解。病気ってそれだよ。数学好きすぎて籠っちゃうって。」
　好きなことに真っ直ぐ過ぎるんだろうな、アイツ。外に出ていたこと自体が驚きだけど、きっと時間とか忘れてるんだろう。俺みたいな凡人からしたら、奇行だったり病気だったりにしか見えない。
「好きなことに熱中しすぎたら寝食忘れるタイプじゃん。籠ってるんじゃね。」
「え。でもアイツの親見たことあるけど結構厳しめだぞ。無断欠席なんてさせるか。…って確か二人とも居ないんだっけ。うちの親に頼みますって言ってたし。」
　いや、これって俺の予想当たったかも。
「これ結構な確率で、部屋に籠ってひたすら数学の問題解いてるんじゃないか。」
「うっわ、俺には理解できない。」
　あからさまに気持ち悪いと嘆く笹井に、俺は頭を抱える。斎藤は静かに言う。
「いや。まだそうとは限らないだろ。」
「そーだよ、上内。風邪ひいてるだけかも。」
「それもそうか。」
　俺はふうむと考える。というか、幸永はどうした。アイツ幸永のこと好きじゃなかったのか。よくわからないが、一昨日スーパーに居たのは事実。この前俺が会った時、幸永の名前は出さなかった。けど、用事があると言っていた。
「やっぱり望の考えてることわからん。」
　静かに食事をしていた斎藤がチラリと此方を見て、不満そうに眉をひそめる。笹井はあ、そうだと声を上げる。
「アレだったら、今日うちのマンション来るか。アイツは直接言わないと外の世界に出て来ないだろうし。」
「うわあ。」
　俺は頭を抱える。笹井の言う通りだ。今部屋に籠っているなら一度会いに行った方がいいけど。斎藤だって今は風紀委員の方の仕事をしている。田代は為吉に付きっ切り。生徒会室に幸永と金森だけ置いておくのもなんか申し訳ない。

　斎藤は弁当の蓋を閉じる。やっと食べ終わったようだ。
「…何かあったら俺が対応しておくから、明川連れ戻して来い。」
「え。」
「今日くらいお前の分の仕事進めとくし。」
「いや、お前のそれは。」
　先ほどの書類があるであろう位置を指さすと、彼は静かに頷く。
「…見た目ほど大変じゃない。」
「今さっき、字を解読するのが大変とか言ってたじゃん。」
「大変なのさっき終わった。」
「え、さっきので終わり。」
　もうよくわからない。斎藤は大変なのか、そうでないのか。俺の表情を見て、彼は軽く微笑む。なんというか、普段無表情な分コイツの微笑って素晴らしく綺麗だな。イケメンって腹が立つ。
「明川連れ戻す方が、優先だろ。散々巻き込んだんだからこれくらいいいよ。」
「え、じゃ、じゃあ、本当に任せるぞ。」
「いいよ。今日の分進めとく。」
　なんか斎藤に言って貰えるとちょっと有難い。

　笹井は斎藤を見て一言。
「お前、普段全然思わなかったけど、顔整ってんな。」
「…何、今更。」
「笑ったら特に。」
　斎藤の少し警戒顔。姉の言葉を使うなら、斎藤は儚げな綺麗系イケメン。涼しい目に白い肌。黒髪も結構サラサラ。まあ、男から見ても綺麗。普段は無表情な仏頂面だけど、さっきみたいに笑えば、ああコイツ綺麗だなってくらいには意識する。
「演劇部の展示の方、手伝わねえか。衣装貸出とかあるんだけど、お前売り子にしては最適。体型普通だし顔整ってるから大抵なんでも似合う気がする。」
　確か、笹井は演劇部だと言っていたか。演劇部は二日目の公演以外にも、教室一つ貸し切って展示をしている。今までの公演で使った衣装の貸し出しや、台本や大道具の展示など、裏方の仕事ぶりを展示するらしい。
「当日は風紀委員の割り振りあるし。」
　斎藤は断る。余り着飾るのとか興味なさそうだしな。そう思っていると、笹井は少し考える。
「斎藤繋がりで、斎藤一のコスプレとかどうよ。新選組。」
「だから無理。」
「お前が居ればきっと女子は釣れる。」
　そういや、笹井って演劇部裏方の代表だとか言っていたか。彼自身大道具をやっているのだが、他の男子に比べてオシャレだな、とは思う。衣装とかそういうことも取り仕切っているし、元々の美的感覚がそうさせているのか。斎藤は軽くため息をついた。
「…南棟、二階の東から三番目の窓。」
「ひっ。」
　笹井は顔を真っ青にして立ち上がる。
「斎藤、風紀委員の仕事、頑張れよ。」
　斎藤はシレッと弁当を片付ける。もしかして、窓割ったの黙っててもらってるとか。いや、あり得るけど。


＊＊＊
笹井　隆一・ささい　りゅういち
演劇部、二年。

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		<dc:date>2018-10-19T23:41:54+09:00</dc:date>
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		<title>14.監査役は暇じゃない</title>

		<description>
　幸永は言う。
「田代先輩いないと、…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 
　幸永は言う。
「田代先輩いないと、華が無いですね。生徒会って。」
「舐めてんのか幸永。お前が面倒臭いところまで現実逃避してたからだぞ。」
　俺のツッコミに幸永はテヘっと笑う。その表情にイラつきながらも俺はコピー機の前に立つ。俺と幸永の会話に少し気まずそうな金森も一応何も言わずに仕事している。目途が立ってから、やることがはっきりした。
　まずもって、補習組は補習が優先だ。なら、早く終わらせてくれなければいけない。此処で悶々と考えていても状況がわからないから、先生に確認して、終わらなそうなら教えてでも早く終わらせないと。このことに関しては補習組と生徒会メンバー、利害が一致しているだろう。誰だって補習は早く終わらせたい。その後何処に向かうとか、幸永に会いたくないとかそういうことは関係ない。
　先ほど携帯を見ると、田代曰く、泉は一教科だけ。彼自身死んだような目をしていたが、終わらせたい意思はあるのか、あと二、三日には終わるだろうと先生も言っていた。ただ、大変なのは柊為吉。運動部によくある、部活も勉強も上手くいかなくて悶々としているブルー期間に入っているらしく、中々終わらないと。しかも、一年は数を解けと言わんばかりに問題数が多い。進度も遅く再来週にまでかかりそうだという話を聞いた。田代は慌てて為吉に数学を教えているらしいのだが、ブルーになり過ぎて、補習を終わったら生徒会に戻るという言質が取れたらしい。
　一件落着なのだろうか。いや、補習終わってないしダメだわ。


　本当は今日、明川にもう一度話を聞きに行くつもりだった。というか、幸永に振ってもらってどうにかするか、とも考えていた。けれど、明川は何故か今日休み。休みならしょうがないし、一人は帰ってくる目途が立ったのでそれでいいか。連れ戻すということはお休み。その代わりに今できる作業を終わらせておこうと四人で仕事しているのだ。
　とコンコンと音がする。
「風紀委員長、三年三組鎌田康照だ。」

　突然の風紀委員長の来襲。金森は反射で幸永を椅子の下に押し込み、斎藤は自分の前の書類を避けて、コップのお茶を両手で持つ。うんそうだよ。幸永と斎藤が手伝ってるのはばれたらヤバい。
「ど、どうぞ。」
　そう声を上げると、扉が開く。入ってきた彼は、生徒会室を見渡していつもの嫌味な笑顔で笑う。それから、お茶を飲んでいる斎藤を見下ろした。

「久しぶりだな。副会長、上内くん。」
「お久しぶりです。鎌田先輩。」
「おや、斎藤の報告では岩崎会長は戻ってきていると聞いたけれど。」
　斎藤の方を勢いよく見ると彼はお茶の水面一点を見つめ、いつもの何を考えているかわからない表情になる。斎藤は言う。
「今日はたまたま、歯医者だそうですよ、鎌田先輩。」
「そうか。〈たまたま〉か。」
　この人気付いてんじゃねえか。でも取り敢えずナイスフォローだ、斎藤。鎌田先輩は金森の方を見る。
「おや、生徒会庶務の金森史くん。」
　金森はいつも通り彼をジッと見る。こういう時猫を被るのが上手いコイツはボロが出にくい。
「夏休みはどうしてたのかな。」
「夏期講習とオープンキャンパスです。上内先輩も知っていたはずですよ。」
　あ、コイツウソつきやがった。そう思いつつ俺も頷く。
「金森のは聞いてましたよ。」
「ほう……泉くんと柊くんが補習だとは聞いていたけれど。田代さんと明川くんは。」
「田代は先生に呼ばれていないだけです。明川は今日欠席。」
「そうか。戻って来て何より。」
　この人嫌味言うために生きてるんじゃね。俺は動揺を悟られないように尋ねる。

「で、鎌田先輩。何をしに。そろそろあなたも暇じゃないでしょう。」
「九月十日までにこの書類を提出しろ、と言ったのは君じゃないか。」
　夏休み中に渡した書類だ。多くの委員長は休み時間などに持ってきてくれていたのだが、彼は直接生徒会室へ持って来たか。両手で受け取り軽く不備がないか確認すると、それを机の上に置く。
「ありがとうございます。十日までまだ日があるのに、お早いですね。」
「うちは君たちとは違って、優秀だからな。」
「そうですか。」
　俺らは仕事が遅いってか。というか、壁に張ったリストを見ているので完全に今の進行状況わかっているだろう。この前まとめた連れ戻し計画に関しては壁に張るのをやめてよかった。斎藤が虚偽報告をしたのがばれてなくて済む。

　鎌田先輩は俺を見たまま言う。
「斎藤。」
「はい。」
　斎藤も彼の方を見もせずに言う。
「暇そうだな。」
「…まあ。俺は監査だけですしね。」
　ごめんなさい。本当は滅茶苦茶働かせてます。心の中で謝る。
　鎌田先輩は少し考えて、斎藤の方を向いた。

「そうだな。書類仕事なら、ここでやれるな。」
　え。つまりは、斎藤に風紀委員の仕事を与える、と。そう思い、何か言おうと思ったのだが、口を閉じる。バレたらヤバい。生徒会は斎藤を馬車馬のように働かせていると。斎藤は静かに尋ねる。
「それは如何なものかと。ここは生徒会室です。」
「それほど重要なものじゃない。一年の時やったような簡単な雑用を少し引き受けてくれないか。」
　すると金森は静かに言う。
「貴方たちは、優秀じゃなかったんですか。」
　そうだもっと言ってやれ。斎藤だって忙しいんだぞ。俺らのせいで。
　鎌田先輩はニッコリと笑う。
「そうだな。優秀過ぎてクラスの出し物の準備や部活の準備を引き受けている場合も多い。皆に均等に仕事を割り振らないと大変なんでね。」
　最もな正論ですね。斎藤はサラリと答える。
「わかりました。」
　金森と俺は口を閉じて目を反らす。ごめんなさい。生徒会の仕事を風紀委員に押し付けている、ということ自体異常なのに。それを報告させないようにしてしまい申し訳ないです。
「今から風紀室へ来てくれ。」
「わかりました。」
　鎌田先輩が部屋を出る。
「失礼した。少し、斎藤を借りるよ。」
「失礼しました。」
　その後を斎藤が追いかける。

　廊下を歩く音が聞こえなくなったくらいに、俺と金森は机に倒れ込む。
「うわあ。」
「うわあ。」
「大変なことが起きましたね。」
　幸永は机の下から顔を出す。そして、またさっき座っていた席に座る。
「そうでなくても、今週末まで田代先輩居ないのに。」
「斎藤とて、優秀だけど人間だ。今まで通りに仕事は進まない。」
「そうですね。でもノルマは終わらせないといけませんしね。」
　随分ノー天気な幸永の声に俺と金森はズーンと落ち込む。というか、幸永も今週何日か生物部の文化祭準備に向かうと言っていた。夏休みの間にいろいろ終わらせているし、研究の成果を展示して、飼っている魚たちの説明プレートを作って飾りつけをするだけと言っていた。何日かで大丈夫と言っていたのだが、コイツも大変だ。

　暫くすると扉の外からか細い声で「開けて。」と聞こえた。幸永が扉を開けると両手で青い事務ファイルを何冊か抱えた斎藤が立っている。なんだその書類の量。
「斎藤。それなに。」
「ここ五年の風紀委員の文化祭での事件…調書かな。」
「風紀委員なにやってんの。」
　何その仕事。
「見返して、今年はそれが起きないようにするんだって。…で、俺はこれを大体の表にまとめる。」
「去年の見ればいいだろ。」
「去年の見るけど、一応資料って。」
　その言葉に金森はああ、と頷く。
「なるほど。見たほどは大変な仕事じゃないってことですか。」
「風紀委員の誰しも字が綺麗とは限らない。」
「え。」
　もしかして、解読しなければいけないということか。斎藤は机に書類を置いて、ため息をついた。
「…今週末までって言われた。ごめん。俺、暫く戦力にならない。」

　俺は思わず嘆く。
「鎌田が憎い。」


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		<dc:date>2018-10-19T23:37:16+09:00</dc:date>
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		<title>13.欲張り者は失敗する</title>

		<description>　生徒会書記、田代佳枝は男子生徒の前に…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 　生徒会書記、田代佳枝は男子生徒の前に座る。男子生徒、生徒会会計の柊為吉は目の前の女子を見て目を丸くした。久しぶりに見た顔。一つ上の先輩で、特に何か怒られたことはないような温和な女性だという認識があった。けれど、今はイメージとはかけ離れて、呆れたように此方を見る。
「田代さん。」
　そう言えば彼女はあからさまに大きくため息をついた。
「アンタ成績よかったんじゃないの。夏休みの宿題終わってなくて、文化祭準備に参加できない生徒会役員って初めて聞いたんだけど。」
「え、あ、……すみません。」
「さっき宮下先生に聞いたらこのペースなら二週間はかかるって聞いたけど。」
「え。」
「生徒会会計がなんで二人いるか知ってる。二人いないと仕事終わんないからなんだけど。」
　随分嫌味染みて言われた。
　為吉は一学期の終わりから、一度も生徒会室へ行っていなかった。サッカー部に入っていることはみんな知っているし、来れる日だけ来ればいいと言う優しい言葉を貰って、それでも現状に甘えず頑張っていた。けれど、気が付いたら自分には好きな人が居て、その人の傍に居たい。離れたくない。と考えていたらサッカー部も生徒会もどちらにも行けていなかった。自分は好きな人の為に学校生活を過ごしたい。どうせ生徒会だってそんなに行っていなかった。だから、生徒会には行けないと上内さんに言った。サッカー部は…これからどうするか考えなくてはいけないが。
　ただ、生徒会に関しては、もうメンバーと数えられていないのだろうと思った。
　田代はそのまま言葉を続ける。
「文化祭前は帳簿付けとか忙しい。いくら去年の代の人たちが予算振り分け終わらせておいてくれたとはいえ、終わった後大変だよ。決算。」
「あ、あの。」
　為吉がオズオズと言うと彼女はん、と首を傾げる。
「明川さんは。」
　生徒会会計の二年生、明川望。すると田代は為吉の頭にチョップをした。

「先輩に仕事押し付けんな。」
「イデ。」
　地味に痛い。そこを押さえて彼女の方を見るとため息をつかれた。
「サッカー部、行ってないの。サッカー部の先輩たち、生徒会で忙しいって思ってるよ。」
「…すみません。」
「生徒会も来てないよね。上内が誘ったのにきっぱり断って逃げたって聞いたけど。」
「…すみません。」
「好きな人、出来たんだって。でも、補習してたら会いに行けてないじゃん。」
「…そうですね。」

　声に出されると随分情けないように思う。部活も、生徒会も頑張ろうとして、どちらもダメにした。だったら好きな人の為に頑張ればいいのに、勉強ができなくて会いに行けない。為吉は自分が本当に嫌で下を向く。
「そりゃ私としては生徒会来てほしいよ。でも、気持ちが伴わなかったら大変な仕事、頑張れないのは知ってる。」
「…はい。」
　為吉は持っていたシャーペンを握る。どうすればいいのかわからない。本当は全部とって、欲張りに生きるつもりだった。でも、結局全部手放してしまった。自分は何一つ出来ないような気がした。

　為吉の好きな人が、金森を振ったと聞く。いっそのこと自分も振られたいと思った。一度何もない白紙に戻して、サッカー部も退部して、生徒会もやめて。本当は付き合いたい。キスをしてもっと触れたいと思う。けれど、次に会いに行ったらきっと振られる。彼は決心したように痛む心に鞭打って、選ぶことに決めた。彼は前に進んだと言うのに、自分は進めていない。

「こら。話を聞きなさい。」

　田代の通る声に為吉は驚く。モヤモヤが急に晴れてクリアになるように。酸欠だった頭に酸素が補給されたように。はっきりした視界に田代は告げた。


「何でもかんでもすぐ諦めた顔しないで。アンタが今しなきゃなんないことは何。」
「…え。」
　今自分がしなくてはいけないこと。
　為吉は震える口をゆっくりと開く。
「さ、サッカー部に退部届。」
「違う。」
　彼女は為吉を睨んだ。
「補習でしょ。」

　田代佳枝は温和で、はきはきしていて快活な女性だ。はっきりしていて、自分の仕事をしっかりとする。生徒会で唯一の女性だけれど、気後れしていない。それだけ強い人だ。

　為吉はポカンとした。
「え、あ、はい。」
　今思えば確かにそうだ。田代はノートを指さす。
「ブルーになるのは勝手だし、サッカー辞めるのも勝手。でもさ。目の前のことまずやんないと。」
「…はい。」
「私が教えてあげるから、早く生徒会に戻る。」
　戻っていいんだ。
　彼女のはっきりとした言葉は頭の中に入ってくる。彼女の強さが、頼ってもいいんだと安心させてくれた。
「補習終わらせて文化祭準備。それは決定。そのあといろいろ考えなさい。好きな人のこととか成績のこととかサッカーのこととか考えるのはその後。」
「はい。」

　田代は胸ポケットに入れていたボールペンを取り出し、机に置いていた範囲表のプリントを手に取る。廊下側の窓を台紙にして、何かサラサラと書く。そして、それを為吉の前に見せた。
「一、補習を一週間以内に終わらせる。二、文化祭準備。…これが文化祭までの仕事だから。異論は認めません。」
　少し強引なくらいが有難かった。

＊＊＊
柊　為吉・ひいらぎ　ためきち
生徒会会計、一年生。

 ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2018-10-19T22:09:05+09:00</dc:date>
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		<title>12.TODOリスト</title>

		<description>
「そう言えばどうして、斎藤先輩がここ…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 
「そう言えばどうして、斎藤先輩がここに。監査なら山下先輩とかのイメージでしたが。」
　金森は良くも悪くも優秀だった。彼が戻って来て、遅れた分が少しずつ前に進みだす。雑用は斎藤と幸永に任せて、生徒会がしなければいけないことを俺と田代と金森が行う。二人増えたと言うのは作業スピードが格段に速くなった。
　いつも通り太々しく告げた金森に、振られた相手居るのによくお前その態度続けられるな、と思った。まあ、いつも通り居ろって言ったの俺だししょうがないか。金森を連れ戻して、二日。幸永曰く、ヤンデレっぽくない人から少しずつ切っていっているらしい。金森ほどストレートに断ったら逆切れされそうだからやめて置けと言ったら、なんとかしっかり断れるようになったらしい。相手の人格を否定するのではなく、自分にはその思いを受け止められないとしっかり告げるのがいいとどこかで聞いた。モブ的な人は少しずつ減っているとか。まだ野球だったらトーナメント出来るくらい人要るらしいけど。
「俺が指名した。斎藤ならパシれるかと思って。」
　斎藤が無言で此方を睨む。コイツホント表情豊かになってきたよな。この二週間強で。彼は聞こえるか聞こえないかの小さな声で呟く。
「人の好意をなんだと思ってる。報告してやる。」
「ごめんごめんごめんって。斎藤マジごめんって。」
　彼は目を反らす。まあいいや。仕事しないと。

　金森はふーんと頷く。それを見て幸永はニッコリと笑う。
「ふと思ったんですけど、斎藤先輩。本当に、風紀委員は大丈夫なんですか。」
「大丈夫って。」
　俺が尋ねると彼は頷く。
「生徒会を解散させたいのはわかりましたが、そもそも僕の周りにも風紀委員の自由役員数人いましたよ。なのに、生徒会に監査まで送ってて、大丈夫なのかなって。」
「え。」
　そう思って斎藤の方を見ると彼は無表情のまま頷く。
「その自由役員。本人たちが気付かぬうちに除名されてる。」
「うわあ。」
「うわあ。」
　俺と金森はほぼ同時くらいに声を漏らす。流石風紀委員会。その自由役員も幸永に振られたらどうなるんだろうか。斎藤はそのままシレッと続ける。
「風紀委員は通常通りだ。元々の人数が多いし。」
「あ、そうでしたか。」
「温かい季節にゴキブリの如く沸いてくるのが、風紀委員だから。」
「斎藤お前自分の所属してる委員会、それでいいのかよ。」
　ゴキ…もっといい表現あるだろ。想像しちゃっただろ。別に虫ダメなわけじゃないけど、不快だわ。でもま、風紀委員って温かい季節は活動盛んだな。マジで。冬の風紀委員会の黒パーカーと赤い腕章の黒い集団が頭に過るが、盛んなのは体育祭と文化祭か。
　金森は不快を前面に押し出しながら、言う。

「…お噂通りですね。では、どうして、斎藤先輩はそのゴキブリの集まりに。」
「金森こら。身内が言うのと外の人が言うのじゃニュアンスが違う。」
「失礼、上内先輩。でも、気になりますよね。」
　金森はかっこをつけて言う。この喋り方でも絵になるからナルシストイケメンは腹が立つ。ま、後輩だから許す。斎藤はゆっくりと立ち上がる。俺に資料を手渡す。
「それ。終わった。」
「じゃあ、これ。やり方わかるか。」
「さっきの要領だろ。」
「ああ。」
　それだけ言い、斎藤はまた席に着く。少しイラつきつつも金森は言う。

「で、どうしてですか。斎藤先輩。」
　彼は口を閉じた。それから、面倒臭そうに口を開く。
「……なりゆき。」
　そろそろ喋るの疲れたのだろうか。わかりやすい。


「上内ヤバいよ。」
　今日は珍しく来るのが遅くなると言っていた田代の声が勢いよく扉を開きながら、聞こえる。走ってきたのだろうか、肩で息をし、リュックの紐を持ちながら言う。慌てた表情。斎藤は静かに「走るな」とだけ言う。
「何がヤバいの。」
　金森と幸永は不思議そうに顔を上げた。
「為吉と泉が夏休みの宿題出してないからって、教室に残らされてる。物理的に連れ戻せない。」
「うわあ。」
　俺はあからさまに眉をひそめる。田代は鞄を自分の席で下ろしつつ言う。
「いや、私、夏休みの宿題のノートに名前書き忘れてて先生に呼ばれたんだけどね。」
「しっかりしろよ、田代。」
「いや、それだけならすぐに終わったんだけど。先生の手伝いさせられたの。予想はしてたけど。」
「ああ、だから遅れるって。」
　放課後俺と斎藤が生徒会室に向かう途中、田代は何処かに向かいながら「先生に呼ばれてて遅れる」とだけ言っていた。なるほど。
「じゃなくて、その先生。数学の宮下先生だったんだけど、為吉のクラスと泉のクラスも受け持ってるらしくて「文化祭シーズンで忙しいのはわかるけど、宿題はしなくちゃ」って。」

　田代は苦笑いをするしかなかったのだろう。いや、生徒会の仕事で夏休みほぼ潰れた俺と田代は宿題終わらせて学期初めの実力テストの勉強までしてましたけど。お前ら遊んでただけだよな。
　ふと幸永を見ると、彼はニッコリと笑う。
「勿論僕は宿題してましたよ。なんか周り煩かったけど完全に無視して勉強する能力もついたみたいで。」
　なんかこの子可哀想。金森の方を見ると彼は苦い顔をしつつも言う。
「いや、僕も日課の勉強はしてましたから。」
　この子こういうところは頭良い。確か一年で学年一位キープしてるらしいし。
　生徒会は基本的に成績を買われて入る場合が多い。成績がよく、何か面白いことがしたい、と言う人ばかりだ。こんな宿題してなかったから居残り、とかは聞かない。精々体調不良でテスト受けられなかったから、追試、くらいだ。
　田代はバンと机を叩く。斎藤は小さな声で「机叩くな」と言っていた。お前もっと主張しろよ。

「あんまりやらかしてると、先生に生徒会のことバレる。」
　そう。今はまだ。風紀委員の生徒が気付いているだけなのだ。先生にバレて、強制的に風紀委員の介入をされてしまったら困る。
　いくら自由や自主などが言われていても、今していることは文化祭準備。文化祭と学校説明会は外に発信する重要な行事として…絶対に成功させなくてはいけない。先生だって張り切っているのだ。
　顔を青くする田代に、苦々しく眉をひそめる金森。俺は下を向き考える。

　待て。取り敢えず、アイツらは宿題をさせるために絶対ここには来れない。ならその前に早めに残りの生徒会会計明川を連れ戻さなければならない。会計は独特な仕事が多いから、アイツが戻ってきただけで戦力アップだ。あいさつ回りの為に岩崎を連れ戻さなきゃ。いや、アイツは他の四人って言った。今アイツは意地になってるから、本当に四人戻らなきゃ戻ってこないかもしれない。初めのうちはいい。俺が出ても。でも当日が近づけば近づくほど岩崎が居ないと困る。
　夏休みの宿題で居残り。これはまあ、アイツらが早く終わらせたらいいだけ。でも、今幸永が告白を断ろうとしているのは知っているだろう。やる気を出すのか。元に戻って幸永を囲っていたら、次は自分が振られるかもって思うかもしれない。ああ面倒臭い。
　アイツらが何を考えているかわからない。
　ああでも、風紀委員の介入を防ぐにはやっぱり全員集めなければいけない。

　考え込んでいたら、斎藤はポツリと呟く。
「考えを文字に起こせ。」
「え。」
　斎藤は手を動かしたまま、静かに告げる。
「お前らが思いついた方法だろ。しなくちゃならないことをまとめて。目標を決めて、時間を割り振る。」
　幸永はニッコリと笑ってコピーの裏紙と黒マジックを用意した。その様子を見て、金森は少し驚く。
　斎藤はやっぱり声を張らずに言う。
「一人で考えてても上手くいかない。」
　俺は斎藤の方を向いて笑う。それから言う。

「いいこと言ってんだから声張れ。」

　田代と俺と幸永は一か所に集まる。金森も驚きつつ此方にやってきた。



　マジックのキャップを開いた。俺は言う。
「目標は文化祭の成功。今から考える小目標は生徒会役員を連れ戻す。」
　田代は頷いた。
「そう。それで、具体的な名前は岩崎晶、明川望、泉梅太郎、柊為吉。」
「…泉先輩と為吉は今補習中。いつ終わるかわからない。」
　金森は言う。それに幸永は続ける。
「その三人だっけ、いや四人か。…四人は僕がはっきり言っても人の話聞かないから。難しいと思うよ。」
　斎藤は作業を続けながらボソリと呟く。
「それと。岩崎は明川たちが戻らないと戻ってこないかもしれない…風紀委員の監査が気に食わないんだ。」

　――九月の半ばには介入しなければならなくなる。
　鎌田先輩は以前そう言った。ということは、半ばまでは待ってくれると言うことだろう。だったら、それを利用する。九月十五日に風紀委員が介入するまでに、先生にバレないように仕事を進める。クラスや文化部たちの質問にも答えて、出し物のチェックをして、それまでは外部との連絡は俺が取ろう。それしか方法はない。二十日までにクラスや文化部に提出する書類系を全て終わられて、あとを託さなければならないから、皆を連れ戻すことに全力は注げない。
　前半の準備の方が、人手が必要なのだがな。とにかく人数で言えば五人はそろっている。二人で回して居た時よりも効率は上がっているし、例年のペースに追いつきつつある。ただ、いつまでも幸永がここに居たら彼自身の仕事、生物部の準備に支障が出るし、囲っていた連中も気が付いて押しかけてくるかもしれない。仕事をしないのに屯されたら実に困る。

　金森は言う。自分は幸永にきっぱり言ってもらえたのがよかった、と。曖昧なのが一番どうすればいいかわからなくなったんだ、と。
　幸永は言う。僕が一番いけないのはそこだろうね、と。聞き分け悪いかもとかじゃなくてしっかり言わなきゃ、と。
　田代は言う。補習だって、やる気を出さなきゃいつまでも帰って来れない。勉強くらい私たち見てやれる。と。

　風紀委員会は俺たち生徒会に逃げ道を用意した。でも、俺たちはそれには逃げ込みたくない。だから、生徒会には生徒会の為の逃げ道を用意してやることにした。


　いろんな要素を書きだして、みんなで話し合う。自分一人がどうにかするのはこんなにも簡単だと言うのに、誰かを動かすと言うのは難しい。況してや気持ちの問題なのだ。恋愛感情。誰にだってあって、盲目になってしまっても仕方がない。彼らからしたら大事な時期になにしてくれんだってことだろう。
　コピーの裏紙が無くなり、八月のカレンダーを裏に向ける。何かメモすると思って捨てずにおいていてよかったかもしれない。

　傍から見たら何してんだって思うだろう。でも、俺たちにとっては大事な行為。

　俺はマジックペンのキャップを閉じる。それから、書いたものを持ちあげて、ニヤリと笑った。


「なんだ。目途が立ったじゃないか。」


　俺も田代も幸永も金森もニヤリと笑った。
 ]]>
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		<dc:subject>-</dc:subject>
		
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		<title>11.生徒会庶務金森史をどうにかする</title>

		<description>

　幸永は金森を呼び出す。今思ったけ…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 

　幸永は金森を呼び出す。今思ったけどあれだけ囲われて、幸永は結構自由に動けている。どうやって生徒会に現れたのだと聞いたら、彼は人を撒くのに慣れたんです、と疲れたように言っていた。彼曰く、高校に入って出来た、特技らしい。でもまあ、特技を発揮し続けるのは不可能だし、結局放課後は生物部に行くので捕まる、とのこと。生物部の人たちも困っているだろう。と思ったが、幽霊部員ばかりで、真面目に活動しているのは幸永と才川だけらしい。幸永の幼馴染の才川って名前ばっかり聞くけどすげえよな。後輩ながら尊敬する。
　それはいい。金森と幸永は告白スポット、北棟の裏で向き合う。金森の顔は赤い。これからもしかしたら自分一人に選ばれるんじゃないかと言ったほどに。ああしてたら可愛いものだ。多分、金森一人が恋煩いだったら俺も田代も応援した。でも、集団でされたからこんな雑な扱いになるんだ。ごめんな。
「…昭一郎。こんなところに呼び出してどうしたんだ。」
　自分の胸の中の思いを悟られないように。期待なんてしていない、ただの呼び出しだと言い聞かせるように彼は言う。いつも通りで居ようと努める。
　幸永は金森を見上げる。幸永も金森も小柄だ。どちらも中学生と言われても可笑しくないような見た目。金森は幸永の上目遣いを見て、ドキリと頬を赤くする。
「僕、金森くんは生理的に無理。」
「は。」

　幸永くんちょっとストレート過ぎはしないだろうか。
　
　立ち上がってツッコミを入れようとするのを両隣の田代と斎藤に押し戻される。ちなみに俺たちは今金森の死角になる茂みの中に身を潜めている。北棟裏の告白スポットは、静かで人通りが少ないせいで、声が少し遠くでも聞こえる。だから、告白スポットと言われる反面、覗き見スポットとも言われているのだ。

　金森がぽかんとしたのを見て、幸永は言う。
「僕、ナルシストって嫌いなんだ。君って自分の話しかしないし、確かに頭いいみたいだけど、上内先輩とか斎藤先輩見てたらバカにしか見えない。僕、バカは恋愛対象にならない。友達ならいいかなって思ったんだけど、君はその気じゃないみたいだし、ここは希望持たせないで断った方がいいかと思って。」

　やっぱり、幸永くんストレート過ぎやしませんか。お前何処が優柔不断で断れなかったのよ。というか関が切れたように話すな。
　ツッコミに立ち上がらないか不安になったのか、斎藤と田代は俺の肩を下向きに抑える。大丈夫。大丈夫だから痛いって。
　絶句していた金森が、あの、と声を漏らす。
「…それ、言いたかったのか。」
「僕の性格が悪いのは自分でも自覚してる。でも、酷いこと言ったとしても断っておくべきだと思って。」
「じゃあ、…誰を選ぶの。」
　いつも自信満々の金森っぽくない。下を向きショックを隠せないまま、聞く。本当は怒りたかったのかもしれない、でも感情で行動出来ないし、宙ぶらりんのプライドが撃ち抜かれてどうすればいいのかわからなくなっている。普段真面目な後輩として可愛がっていたからか、心が痛む。
　幸永はしっかりと彼を見て、言う。
「誰も選ばない。僕は、男は恋愛対象にならないから。」
　はっきりとした声。多分、自分の状況がわかって、自覚したのだろう。自分の優柔不断さに。自分を作るのも疲れた、この周りに居る連中は友達じゃなくて恋人になりたい連中なんだって。だから、幸永はとっくに覚悟を決めたのだろう。人を傷つけると言う覚悟を。傷つけても、解放しなければならないと、言うことを。
　金森はそうか、と呟く。
「…てっきり、上内先輩のことが好きなのかと思った。昨日生物室に居ないと思ったら、生徒会室にいるみたいだし。」
「え、知ってたの。」
「安心して。別に岩崎会長とか他の人たちは知らないと思うから。僕が見つけただけ。」
　金森は顔を上げる。彼の表情は今、見えないが、きっと強がって普通の顔をしようとしている。幸永は少し良心が痛むと言った感じに眉をひそめ、でも、それを振り払うように言う。
「先輩たち困ってた。」
「うん。聞こえた。」
　金森の言葉に驚く。聞こえたのか。アイツは。
　彼は、幸永の頬に手を伸ばす。ハッとして、幸永はそれをバシンと払った。金森の手が宙を掴む。
「…はっきり断ってくれて、ありがとう。」
「金森くん。」
「多分僕、頭に血が上ってたんだ。」
　手を下ろして、自分自身に呆れるように軽く笑う。痛々しい声。

「幸永のこと運命だと思ってたんだ。なのに、岩崎会長とか泉先輩とかに取られちゃダメだって思った。…僕焦ってたんだ。」
「そっか。」
「頭の片隅で、昭一郎に無理して笑わせてるってわかってたのに。」
　彼は声を張り上げた。
「寧ろ断られて、目が覚めた。…ヤバいなー。初めて上内先輩に反抗しちゃったじゃん。先輩傷つけちゃったよ。僕あの人のことは素直に尊敬してたのに。」
　お前の生意気な一言くらい別にいいよ。そう思いつつハアとため息をつく。

　彼の泣きそうな笑い顔が見えた。
「可笑しくなるくらいお前のこと好きになれてよかった。ありがとう、昭一郎。」
　幸永は黙る。


　隣で斎藤がボソリと呟く。
「あれ。拍子抜けするくらい普通に断れたな。」
　彼にとっては予想外だったのだろう。
　まあ、風紀委員から見た金森史は。基本的に生意気。「風紀委員って頭堅すぎですよね。」上から目線。「言われたことしかできないんですよね。アイツら。」それから、ナルシスト。「まあ、僕ほどではないと思いますが。」ちなみに上記の言葉は本当に言っている。ドラマのワンシーンみたいにカッコつけて。そんな彼を横目で見てコイツすげえな、くらいに思ってた。
「金森くんは、若干ナルシ入ってるけど、いい子だから。」
　田代の言葉に斎藤はそんな筈あるか、と此方に視線を寄越す。いや。いやだから、斎藤のその吸い込まれそうな目を見てるとどうにも悲しいんだ。自分が見透かされたみたいで。

　と、金森は言う。
「俺、これからどうしよう。」
　ハッとして俺たち三人は彼の方を見る。幸永は静かに答える。
「今しないといけないこと。しないと。」
「えっと…上内先輩に謝って。あ。あの人文化祭がどうとか言ってた。」
「うん。そうだね。生徒会なんだもの。」
　金森は固まる。それを見て幸永は言う。
「ちなみに、謝る勇気がないからってズルズル生徒会室行かないの、ダメだから。てか、今から行こう。」
「待て待て待て。いや無理だから。ちょっと待って。」
　やっぱり、金森はヘタレなのだろう。
「やらかしたの、金森くんなんだからすぐに謝らないと。」
「え、でも。」
「こら。きっと上内先輩も田代先輩も許してくれるから。」
　呆れたような彼の声に、金森は頷く。
「…屈辱だ。昨日までの自分、死ね。」
　うわあ。


　その後、幸永とは別のルートで急いで、生徒会室に向かう。幸永は俺たちが観察しているということを忘れていたのか、金森の手を引っ張ってずんずんと進んでいく。ヤバいやばい。このまま金森の気持ちが変わらないうちに生徒会室に連行するつもりだ。今俺たちが生徒会室にいなければ、せっかく金森が謝罪する気になってんのに、できなくなる。それは可哀想だ。
急いで、教室のカギを開けて、中に入る。俺がカギをいつものフックに掛けている時、斎藤は電気と冷房をつけ、田代は冷蔵庫から麦茶を取り出し、三人分注ぐ。斎藤は書類を何枚か取り出し筆記用具も鞄から出して、席に着く。俺も斎藤を習う。ちょっと、仕事途中ですと言った感じに机の上の書類をグチャグチャにするのも忘れずに。
　田代は俺と斎藤の前にそれぞれ紙コップを置いて、自分の席に着く。自分のコップを忘れたと慌てて立ち上がり、もう一度取って席に着く。彼女が筆記用具を鞄から取り出している時に、俺と斎藤は麦茶を一口か二口くらい飲んで、仕事を始める。田代も、遅れて同じように仕事を始める。

　それから少ししたくらいに廊下をバタバタと走る音が聞こえる。そして、ノックもせずに勢いよく扉が開く。
「上内先輩、金森くん連れてきました。」
　叫んだ声。随分興奮したように頬を染めた幸永に、首根っこを掴まれて逃げることが出来なかった金森。あの北棟からの距離と時間からして、おそらくここに来るまで二、三度金森はやめとこうと言っている。それを、幸永は無理矢理連れてきた。
　顔を上げた俺と田代の顔を交互に見て、金森は目を見開く。
「ほら。金森史。」
　幸永はそう言って、彼の背中をトンと叩く。彼は少し驚きつつも自力で立って、一歩前に出る。
「あの。上内先輩、田代先輩。」
「何。」
　俺がそう尋ねると、彼は下を見ながら言う。
「…この前、誘ってくれたのに。すみません。生意気なこと言って。」
「うん。」
「あと…、仕事だって、呼ばれてるのに…行かなくてすみません。」
「うん。」
「もしよかったら、また僕を生徒会として扱ってください。」
「いいから、席つけ。時間ない。」
　サラリと言って、鉛筆で彼の席を指さす。すると彼は、動かない。何がしたいんだろう。でも一々甘やかすつもりない。心は痛むけど、自分で動き始めなきゃどうにもならない。
俺は気にせず紙を捲る。いつの間にか金森は俺の隣に立っていた。
　そして、勢いよく頭を下げる。

「本当にごめんなさい。上内先輩。」
「はあ。」
「あの。俺、…気が付いたら全部なかったんです。」
「え。」
　全部ない。とは。不思議に思ってそっちを見ると、顔を上げた金森の顔は涙に濡れている。ここまで豪快に泣かなくても。コイツただのお上品な坊ちゃんじゃねえんだな。今はただの泣きべそかいたクソガキにしか見えない。
「今思ったらクラスメイトには白い目で見られてるし、中学からの友達は俺と擦れ違うたび鼻で笑ってたし、さっき俺幸永には振られたし、もう恥ずかしすぎて死ねます。心が持たないんです。　お願いします。目見て話して下さい。」
「…お前思った以上に傷ついてんな。」
　泣きながら声を上げる彼は、どんどん床に落ちていく。もう土下座なのか蹲っているのかわからない感じ。ふと田代の方を見ると、田代はやべえという顔をしていた。いや、ちょっと厳しめに言ってやっていいから、って幸永にアドバイスしただけなんだけど。確かに幸永ズケズケ言ってたけど、それで期待もなしにすっぱり振られてすっきりした風だったし。というか、好きな奴に今の姿見られてるの知ってるのかな。幸永はうわあと遠い目をしながら此方を見てる。斎藤は見てすらないけどな。
「今までの完全防備どうした。お前マジでキャラ違うぞ。」
「んなこと保てないですよ。」
　それほど自分のしてきたことに悶えてるのか。中二病の頃の黒歴史思いだしてのた打ち回る高校生か。あ、コイツ高校生だ。甘やかしちゃいけないんだよな。と思いつつも、おいおい泣く金森の前にしゃがみ込む。両手を掴んで目を擦るのを辞めさせる。
「ここで泣くからお前カッコ悪いんだよ。普段は結構カッコつけてるのに。」
「そうですよね。穴があったら入りたい。埋めてくれて構いません。」
　彼を此方に向けさせて、俺と目が合う。呆れたようにため息をつく俺を見て、彼は情けなく目を閉じた。
　俺は彼の両頬をバンと叩く。赤くなるくらい。彼はポカンとして目を開く。
　そのまま俺は、彼の頬を手で包み込んだ。
「今日のお前は忘れてやる。だから、いつも通りに戻れ。」
　そうだ。俺はいつも通りのコイツを連れ戻す気満々だったのだ。
「生徒会に戻ってきたならそれでいい。クラスメイトとか中学の友達とか知らねえよ。ほっとけ。」
　彼は口を閉じる。
「お前はお前のままでいい。優秀で、高飛車で、生意気なお前が一番カッコいい。他の奴なんて知らないから、気にするな。」
「……え。」
「お前が生徒会の仕事したいなら、いつも通りやりゃいい。何事もなかったかのように日常に戻ればいい。それがお前だろ。」

　こいつがしょんぼりしていたら、生徒会室の空気が悪くなるだろう。
　金森は俺の手に自分の手を重ねる。それから、ゆっくりと息を吐く。

「はい。わかりました。」
　さきほどよりも冷静な。彼が一番カッコつけている時のように、さらりと言った。


＊＊＊
金森　史・かなもり　ふひと
生徒会庶務。現在高校一年生。

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		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2018-10-19T21:59:01+09:00</dc:date>
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		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
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		<title>10.対策を練る</title>

		<description>「今の不満点。」
「男に好かれる。」
…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 「今の不満点。」
「男に好かれる。」
「周りに集まられる。」
「束縛が酷い。」
「周りがピリピリしている。」
「だとしても顎で使えるわけじゃない。」
　俺と田代は交互に読む。その続きを斎藤は読む。
「したいこと。普通の友達みたいな関係になりたい。生物室に集まらないで欲しい。自由が欲しい。」
　ちなみに幸永は生物部らしい。
「そして、目標が、要らない縁を断ち切って、一から友達作りを始めたい、です。」
　幸永は何枚もあるメモを並べながら、自慢げに言う。本人が今の状況を理解できたならいい。確か、斎藤も似たような状況になったと橋本は言っていた。ならどう思うのだろう。彼の顔を覗く　と、彼はやっぱり何を考えているかわからない。

「これから僕は、流した告白を全部断ってきます。」
「え。ちょ、どういうこと。」
　驚いた田代に、幸永はニコニコしながら答える。
「はい。僕、男に告白モドキされて、驚いたんです。よくわからなくて、きっと友達として好きなんだろうな、って思うことにしてました。そりゃ、十人超えてからは現実逃避ですけど。気が付　いたらじわじわとあの形になっていたんですが、その頃にはもう後には引けなくて。」
「外堀埋められたんだな。」
「はい。今の状況を一旦白紙に戻します。」
　あの形になる経緯がなんとなくわかった。現実逃避してたらいつの間にかあの極論の形になって、状況がわからなくなった、と。コイツ自身優柔不断なのだろう。優柔不断なのと、周りの押しが強かったことと。周りも人数が多いから、焦ったのかな。男って変なところでプライドを働かせるから、嫉妬からか一緒に居なければ、と思ったのかもしれない。
　幸永はニッコリと笑って、斎藤の顔を見る。
「どうですか。斎藤先輩。」
　彼は静かに頷く。思わず田代はツッコむ。
「いや、斎藤。喋りなさい。」
「…きゅ、急に声かけられても言葉詰まる。」
　確かに彼の声、今かすかすだ。

　幸永は頑張ろうと言う気概に溢れていて、頷く。
「僕が優柔不断だったからこうなったんです。いや、予想外過ぎた展開ですけど。」
「まあ、そうよね。告白流してたらこうなるって普通はならないものね。」
　彼女の言葉に幸永はエヘヘと笑う。
「僕、一対一だったら流されそうになると思って、セリフ書き出してみたんです。」
　今回は完全に断るつもりなのだろう。何枚かあるメモを捲り、読み上げていく。
「ケース１、「友達からでいいから。」僕の答え。「絶交です。」…ドヤ。」
「…待て待て待て。一応相手はお前のこと好きでいてくれてんだから、せめて敬意は表せ。」
「えー、上内先輩。そんなこと言われても。」
　不満そうな彼に、俺は斎藤の方を向いた。斎藤は頬杖をついたまま答える。
「…そういう場合、逆上して襲われそうになる可能性。」
　確かに何がダメなのか答えてもらおうと思ったけど、まさかの反応。
「え、斎藤体験済みなのか。」
「歯、食いしばれ。」
　大きく振りかぶった彼を無視し、幸永の方を向く。彼は何枚か紙を取り出す。
「ケース８、「そんなこと言うなら、一度でいいからヤらせろ。」僕の答え「110番もしくは、斎藤先輩に電話して助けを求める。」これで完璧。」
「…幸永。それは根本の解決になってない。ストーカーで被害受ける女みたいになってる。」
　斎藤の言葉に幸永はあー、と考えた。
「じゃあ、「僕、実は女だったんです。」はどうでしょう。」
「いや、アイツら元ノンケだろ。んなことで収まるわけねえだろ。」
「股間を蹴る。…ああ、僕の中の雄な理性がそれはできない。」
　幸永は頭を抱える。
「大体、僕ってどのくらい好かれているんですか。ヤンデレだったら回避不可能に近くないですか。」
「警察に連絡するのも、退学させるのも、文化祭前だから控えたい。」
「え、上内先輩。僕の貞操の危機は文化祭開催の前では……。」
　幸永は絶句しているが、知ったことではない。田代がハイハイと手を上げる。

「もういっその事、誰かのことが好きだからって断るのはどう。」
「その人に被害が及びそうで…僕も考えたんですけど。」
　困ったように眉を下げる彼に、田代は続ける。
「いやあ。女子の名前言ったら可哀想だからさ。上内か斎藤の名前言えばいい。」
　驚いた俺たちに、田代は続ける。
「ほら、じゃんけん。」
「じゃんけんしねえよ。変に恨まれるの嫌だし。」
「既に幸永に名前出されてるだけでも気に食わないのに。」
　幸永は苦笑いをする。

　さて。本気でどうやって断ろうか。いつもなら誠実に断れば、わかってくれそうな人もチラホラいたのだが、なんか性格変わってそうだし。確かに生徒会の明川も泉も柊も金森もみんないつもは頭良い奴なんだ。確かにキャラ濃いし、攻略キャラっぽいし、お前何言ってんだ、みたいな時も多いけど、普段だったらわかってくれる系の人物。
　でも人が変わっているみたいだしな。
「これは一人一人対策を練った方がいいのかもしれない。」
「…そうですね。じゃあ、優先すべきは生徒会の人ですか。」
「そうだな。そっちの方が有難い。」
　理系チート、会計明川望。普段なら、興味のあることと言えば数学とか理科の話。でもなんで、こんなに幸永に夢中なのかもわからない。大体、アイツは好きなことに真っ直ぐ過ぎるけど、周りも気にしてるぞ。
「いつもの明川だったら、文化祭の会計資料渡したら静かになるよな。」
　田代は眉をひそめる。
「いや、いつもが可笑しかったんじゃない。」
「それもそうだけど…ああダメだ。幸永が告白断った場合とか思いつかない。」
　あと、女の子大好きだけど本気になる子は今のところいないと評していた、庶務の泉梅太郎。確かに元気な柴犬系男子だけど、あんなチャラかったっけ。本気になった人、幸永だけって大丈夫か。
「泉…泉…。パス。」
「うん。泉はいい。何かに執着してる姿なんて想像できない。」
　斎藤と幸永が不思議そうに顔を見合わせている。
　次声かけたの誰だっけ。柊為吉だ。一年の、会計の。真面目な体育会系の爽やか少年。サッカー部と掛け持ちしていたと聞いたけど、一年のうちからサボっていいのか。どうせ生徒会もサボってんだから部活もサボってんだろう。恋愛に真剣になってるって言ってたな。アレ、彼なりに真面目なつもりなのだろう。
「柊は…あそこまで青春を振りかざされたら俺は何も言えない。」
「そうね。「僕は抑えきれない思いを昭一郎にぶつけた。」とかいい感じのモノローグ入ってそうだしね。」
「僕、ぶつけられるんですか。」
　幸永はヒイと身を引く。

　最後は、…ムカつく生意気な一年、金森史。庶務だ。プライドが高く若干ナルシストが入った優等生。口が回る。基本は岩崎に対して敵視していて、俺には何も言ってこないのだけどストレートに反論された。つーか、アイツ田代と俺にだけは素直に言うこと聞いてたよな。何アレ。
　幸永に告白断られたら。…元々プライド高いのに態々好きになったとかそういう印象なのだろうか。あ、あり得る。岩崎もそのスタンスなのかもしれないし。だったらどうだろう。断られたら。いや、アイツプライド高いけど、自分の上が居るのは認めてるからな。
「金森。アイツならなんとかなるかも。」
「金森くんが。」
　驚いた幸永に、田代も頷く。
「アイツプライド高いし、ちょっとズタズタにして、トラウマ植え付ければ戻ってくるんじゃない。」
「アイツってなんやかんやでヘタレだしな。」
「逆上して性的に襲ったり、イジメっ子になるなんてプライドが許さないだろうし。」
「結構仮面外れて来ててもまだカッコつけてるしなー。」
「ホント可愛いよね。」
「ええええ。」
　絶句する幸永。これはいけるとテンションがあがる田代と俺。それを静かに見つめる斎藤。


　そうとなれば、時間をかけられない。せめてこの一週間以内にどうにかしなければ。



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		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2018-10-19T21:55:07+09:00</dc:date>
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		<title>9.右往左往</title>

		<description>　うわあ。斎藤がショックを受けている。…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 　うわあ。斎藤がショックを受けている。彼にしては珍しく前に出てきたな、とは思ったが、自分でもやり過ぎだと思ったらしい。何か言い訳するのかと思ったが、口を開いては、また閉じて、開いては閉じる。言葉にしようと思ったけど、それすら面倒臭いと言った感じ。机の上の書類に手を動かしながら。というか落ち込んでも手は動かすんだな。
「大丈夫か、斎藤。」
　そう尋ねると、彼は此方をギロリと睨む。だから、お前の睨み顔普通に怖いって。普段無表情な分、ギャップが半端ない。
「…風紀委員の後輩なら、睨んだら一発なのに。」
　何が一発なのだろう。いや、聞かないでおくけどさ。というか、言うことの聞かせ方が野生動物みたいだな。一昔前のうちの学校の風紀委員会では、普通にヤンキーみたいに喧嘩でいろいろ決めていたみたいだけど。斎藤ももしかしてその種類。いや、また彼のポジションわかんなくなってきた。

　それにしても、幸永は予想以上だった。予想以上に囲われていて、予想以上に小動物のような奴だった。斎藤の言葉をどう受け取ったのかは知らないが、昨日の今日では何も起きていない。あんなに睨まれても伝わらなかったのかな。それとも斎藤との出会いイベントとして処理したのかな。
　斎藤は大きく息を吐く。…いや息長いな。それで自分を落ち着けようとしているようで、それが終わるとどうにもいつも通りの何を考えているかわからない彼に戻る。
「上内。斎藤。次はどうしないといけないか考えないと。」
　田代の言葉に俺は頷く。まあ、それが先決。文化祭準備は地味に進めているけれど終わっていないことが多過ぎる。
「…可笑しいな。斎藤は確かにストレート過ぎたけど、反省してやってくるかと思ったら。」
　俺の言葉に斎藤は姿勢を崩さず考える。
　コンコンと扉をノックする音が聞こえる。俺が返事をする前に動き出す扉を見て、ため息をつく。こういう時は、いつも、風紀委員。きっと新学期なのに会長が来ていないことを文句言いに来たんだ。そう思って田代と俺は頭を下げる。

　と、そこに現れたのは、いつもの筋肉質でしっかりとした肩幅と身長を持った鎌田先輩ではなく。小柄で小動物みたいで少女漫画のキャラクターみたいな…幸永昭一郎。彼は扉に体半分を隠しながら、オズオズと言う。
「お、お仕事中すみません。幸永です。」
「え。幸永。」
「あ。幸永くんだ。」
　俺と田代は驚いた。噂をしたらなんとやら、って感じか。俺も田代も持っていた筆記用具を机の上に置く。
　斎藤は彼のことが嫌いなのか、トラウマ的なポジションに分類されてしまったのか。目が死んで真面目に仕事し始めた。いや、風紀委員のお前に仕事させてるって外に漏れるのどうかと思うから、今は手止めてていいのだけど。
　幸永はゆっくりと入る。それから扉を閉めた。
「ぼ、僕、昨日斎藤先輩に言われたこと、考えて。」
「あ、うん。」
　田代は少し優し気に彼の顔を伺う。俺や斎藤に対しては割と酷いと言うのに、田代も可愛らしい後輩に対しては優しいらしい。

「僕………このままだったらあの取り巻きに囲われてそのまま監禁されて一生を終えそうだなって。いや、刺されて死ぬのかな。」
　顔を真っ青にして、目を反らす。
「え。」
「幸永、くん。」
　ポカンとした俺と田代に彼は続ける。
「そうなんです。斎藤先輩の言う通りなんです。カルト集団みたいなんです。部活行ってください、とか、委員会とか生徒会行って下さいって言っても言うこと聞かないんです。ただ、「お仕事してきてくださいよ、ハート」とかは絶対に言いたくないんですよ。自分のポジションを認めるようで。怒らせたくないんでヘラヘラ笑ってるしかできないんです。」
「…幸永くん、あの取り巻きの手前、昨日はああだったんだ。」
　そりゃ刺されたくねえもんな。それに先輩だもんな。全力で拒否とかはできねえか。どうすればいいかわからなくなるな。確かにあの取り巻き連中先輩方が多かった。一年なんて先輩か同級生しかいないからしょうがないけど。
「あの後、散々、「僕は上内先輩とか斎藤先輩みたいに淡々と仕事をする職人みたいな人、カッコいいと思う」ってフォローしておきましたから。」
「あれ、幸永。お前それなんか、俺と斎藤に火の粉降りかかってないかな。」
「人間関係って怖いですね。」
　幸永はカッと目を見開いて下を向く。いやいやいや。コイツ思った以上に思い悩んでいた。明るいとか聞いてたけど闇いくつも抱えてるタイプじゃねえか。田代が自分の近くの席に座るように言う。
　そこに座らせると、冷蔵庫から麦茶を用意し、彼の前に紙コップを置いて注ぐ。幸永はそれを受け取ると、萌え袖のまま両手で包み込み、飲んだ。
　ちなみにうちの高校の夏服は、長袖ワイシャツにネクタイか開襟シャツ。加えてベストも着用可だ。田代と幸永は長袖シャツにネクタイで、どうにも夏でもかっちり着ているように見える。俺は暑がりだし、斎藤も暑かったら溶けそうな顔をしているせいか、開襟シャツを着ている。
　すると、斎藤はポツリと言う。
「袖。腕まくりするか、そのままきちんと手を出すか、どちらかにしろ。」
　彼は風紀委員だから。制服の正しい着方は、きちんと注意するらしい。
「あ、はい。」
　幸永は頷いて、シャツをまくる。そして、また紙コップを手に取り下を向く。

「文化祭準備、僕のせいでいろいろ面倒臭いことになっているのはよくわかりました。僕、一年生なので実際どういうものなのかはわからないのですが、三人方が疲れているのはわかります。」
「幸永ってバカじゃなかったんだな。」
　斎藤が辛辣だ。幸永は全く気にしていないのか、そのまま言葉を続ける。
「でも、僕が言ってもどうにかなる連中じゃありません。」
「ああ、ごめんな。幸永。俺が思った以上にバカだったんだ。岩崎を始めとした残りの生徒会の連中。」
　それだけ言って、昨日の様子を思いだす。二年が刃向かって来るのは予想したけど、まさか一年は大人しく帰ってくると思った。あそこまでストレートに反発されるとは思わなかった。俺、中学の時バスケ部だったけど、バスケ部の頃で一年共の反論が帰ってきたら数倍になって反論していただろう。俺、丸くなったのかな。
　すると、斎藤は無表情のまま顔をあげた。

「もういっそ、幸永自身と、…幸永の幼馴染って言う才川と二人をここに呼んで仕事させよう。人出はあった方がいいし、どうせ文化祭の後総選挙なんだ。上内と田代＋二人＋他の真面目な生徒呼んで来れば、残りの任期なんとかなる。」

　俺と田代は斎藤をジト目で見る。
「斎藤くん。あんまり総選挙の話しないで。現実って一番辛いの。」
「そんな気がしてたけど、言わないで。今いろんな現実ダイレクトに受け止める自信ないから。」
　斎藤はそう、とだけ呟いて口を閉じる。思ってたけど、斎藤って真面目熱血風紀委員とは違うけど、問題抱えてるよな。…いろいろ。
　幸永はオロオロしている。田代は、幸永の方を見る。

「それで。幸永くんはどうしようと思って、ここに来たの。」
　彼女の言葉に俺は口を閉じる。そうだ。幸永は今自分の意思で何か変えようと思ってここに来ている。きっと、学校の為とか俺たちの為とかそんなことの前に、何かを変えようと思って。
　俺たちは壊れかけとはいえ、生徒会。一般生徒の中から選挙で決められた一部の生徒。だから、生徒代表なのだ。こんな小さな後輩が何かの意思を示すと言うのなら聞いてやろうと思うのが生徒会だ。
　彼は、ゆっくりと口を開いた。
「斎藤さんの意見と似ています。…文化祭の後のこととか考えてはいなんですけど。」
「いや、いいよ。話して。」
　俺はズイと、前に乗り出す。
「僕が生徒会室で仕事を手伝っていたら、嫌でも生徒会の人たち、仕事すると思うんです。」

「どうかな。」
　田代の言葉に俺も考える。確かに、来るだろうけど、仕事はするのだろうか。
「根本が変わってないよね。だって、幸永くんが部活とか生徒会行きなさいって言っても言うこと聞かず囲ってるような連中なんでしょ。」
「田代の言う通りだな。寧ろ生徒会以外の連中が生徒会室で何もせずに屯されたら、此方だって邪魔で仕方ない。」
　彼は下を向く。それから、紙コップを置いて、拳を握りしめた。
「僕、もうどうすればいいかわからないんです。でも、このまま生徒会の皆さんに迷惑かけたくない。」
　震える湿っぽい声。泣くのだろうか。いや、泣く寸前なのかもしれない。彼は、どうすればいいか分からなくなっている。自分の状況を認めたくない。でも、何にも好転しない。このままじゃ、みんなに迷惑をかけるかもしれない。いや、既に迷惑をかけていることを彼は知っている。
　下を向き必死で彼は堪える。涙は零さない。もしかしたら元々泣き虫なのだろう。高校生にもなって泣き虫だなんて、彼自身恥ずかしいと思っているのかもしれない。

「不特定多数に好かれたっていいことない。」
　彼の呟いた言葉は実に説得力がある。俺は彼を恋愛ゲームの主人公と例えたけれど、確かにそうだ。一人の女の子を好きになり、向こうにも好きになってもらう。そういう恋愛に誰もが憧れる。確かに誰か大勢に好かれても、結局自分はその大勢に愛を返すことは出来ない。
彼らを友達だと思おうとしていたのかもしれない。けれど、あそこまで囲われるという不思議な状況。彼自身原因も分からないし、それ以外の人たちからの目が怖い。
「生徒会と風紀委員会は仲が悪いけど。」
　俺はポツリと呟く。その場に居たみんなが下げていた視線が、此方へ向く。
「風紀委員会の嫌味で、生徒会も学んだことがあるんだ。」
「上内先輩。」
「ごくごく最近で言えば…、いくら仕事が遅れていてもそれを理解しなきゃ前に進めないってことだ。」

　鎌田先輩の言葉は、客観論だった。中で居たなら、目の前のことに必死だけど、人に言われたら仕事が遅れていると言うことをきちんと理解できた。現実を突きつけられた、と言った方が正しいだろう。俺と田代でこのままじゃダメだという意識が持てて、でも、風紀委員に頼るのは嫌だと思った。だから、目標を立てて、リストアップして、効率を考えた。
　俺は昨日まとめた、文化祭までの日付が書かれたカレンダーを彼に見せた。

「俺たちには、ここの限られた時間がある。そして目標がある。」
　壁に貼られた「文化祭成功させる」という明確な目標。
「で、その目標を達成するには何が必要かって考えた。」
　壁の一日のノルマが書かれたリスト。今までの紙では、できたところに黒マジックで消してある。
「今、お前はいろいろごちゃごちゃになっているみたいだけど、一度客観的に見てみるのが良い。文字に書きだしてみたら良くも悪くもしっかりわかる。」
　もしかしたら、実にしょうもないことかもしれない。もしかしたら、面倒臭くて目標の期間までに終わらないことなのかもしれない。それでも、全体を見なきゃ前になんて進めない。

　俺の言葉に田代は要らないコピーの裏紙を幸永の前に置く。そして、黒マジックも。
「こういう時はマジックで思いっきり書き出してみるのがいいかも。何が問題なのか、とか、何が嫌なのか、とか。どういうことをしたいのか、とか。」
　彼女は軽く笑う。
「生徒会は、生徒の相談も受けてるの。頭の中まとまるまで、ここの紙使っていいから。」
コピー機の隣にある裏紙入れの箱を指さした彼女に、幸永はゆっくりと頷く。
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		<dc:date>2018-10-19T21:51:08+09:00</dc:date>
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		<title>8.ある意味天才な少年</title>

		<description>　新聞部の橋本由紀奈は陽気に笑う。
「…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 　新聞部の橋本由紀奈は陽気に笑う。
「幸永くんか…ノンケをホモにする天才だねえ。」
「は。」
 俺と田代はポカンとする。反応は薄いが、斎藤も驚いているらしい。橋本由紀奈は二年で新聞部の部長。田代と仲が良く、生徒会の情報が欲しいからと言って俺とも気さくに話してくれる。生徒の情報が欲しかったら大体彼女に聞くといいというのが、うちの学校では有名だ。なんとも恋愛ゲームのお助けキャラ的ポジション。
「幸永くんに惚れた男子は私が確認するだけでも四十四人。一クラスできちゃうね。いや、サッカートーナメントの方が凄さわかるかな。準決勝と決勝が出来る。……でー。見た目は知ってる通り、男の娘。あ、男の娘っておとこのむすめって書くやつだよ。とにかく可愛い男の子。普通に男子だと思って話してたら、どうにも可愛い姿にやられるらしいよ。可愛いとは思うけど、私はわかんないんだけどねえ。」
「はあ。」
「あと明るいからねえ。元気だし明るいし、人の話を聞くのも上手い。同じ、話を聞くのが上手い斎藤くんとは大違い。」
 斎藤を見て橋本はあ、と声をあげた。
「違った。斎藤くんもノンケをホモにしたこと何回もあったっけえ。」
 彼女の言葉に田代と俺は斎藤と橋本を見比べる。と、斎藤は思いっきり彼女を睨みつける。
「余計なこと言わなくていいから。」
「あはは。流石斎藤くんのトラウマだねえ。」
「わかってるなら、そういうこと言うな。」
 楽しそうな橋本に、不機嫌丸だしな斎藤。彼女は彼とは合わないらしい。
「斎藤くんなんかとは違って、断るの、苦手っぽいんだよね。本人は友達が欲しいって嘆いている。」
「へえ。」
 なんだ。男侍らせて喜んでいるのかと思ったが、そうではないらしい。恋愛ゲームの主人公とは違ったみたいだ。それを聞いて少し安心する。橋本はそうだね、と唇に人差し指を当てた。
「友達は同じクラスで幼馴染の才川唯花ちゃんしかいないっぽいね。本人は男の子の友達、欲しいみたいだけど。」
「苦労してるんだね。」
 確かに。それから橋本はいい笑顔で斎藤の方を向いた。
「斎藤くんが友達になってあげればいいじゃないか。似たような境遇だし、気が合うんじゃないかな。」
 斎藤は彼女の頭を思いっきり叩いた。俺には手を出すなと言っておきながら、暴力的じゃないか。不機嫌そうな斎藤を見て、俺と田代はため息をつく。
「由紀奈。そんな斎藤弄らないで。…で、協力してくれそうかな。」
「んー。大丈夫じゃないかな。本人頑張り屋だし、自分のせいで岩崎くんたちが仕事してないって知ったら、なんとかしようと思うでしょ。」
「そっか。よかった。」
 田代は胸をなでおろす。

 初めからこの手を使えばよかったじゃないか。チラリと斎藤を見ると橋本を凶悪な目で睨みつけている。彼も、このことに気付いていれば早く言ってくれればいいのに。…まあ、彼も風紀委員。そういうのは俺たちで気付くべきだったのだろうが。


　ただ、困ったことに、幸永の周りは四十四人の壁があるんのだ。もう完全に箱入り娘的なあれだ。なんだあれ。もう何度も見ているけどカルト集団じゃん。アイツ、教祖様になったら多分すげえことになる。日本がやべえことになりそうだ。具体的に何をするか知らないけど。すると、斎藤はそんな彼らを見てあ、と声を出す。俺と田代が彼を見ると首を振る。
「なんでもないから、気にしないで。」
「いや、言えよ。気になるから。」
「え……。」
「斎藤、言って。」
　田代の言葉に彼は下を向く。疲れたような表情。負のオーラ纏ってる時の斎藤って結構感情豊か。
「あれ。」
　指の先には一人の男子。あれも幸永の信者だろう。
「…一年の時、俺に告白してきたヤツ。」
「なぬ。失恋の痛みを幸永くんで晴らす、と。」
「なるほど。アイツの初めては斎藤だったか。」
「失恋とか初めてとか言うな。」
　田代は叩かないのに俺は叩くって勘弁してほしい。いや、加減されてるだろうけど、隣で呪い掛けられてるんじゃね、って疑問に思うほど睨まないで欲しい。というか、岩崎と話してる時も橋本と話してる時も思ったけど、それほどトラウマが嫌だったのか。
　俺はあっと気付く。
「一人ずつ斎藤に惚れさせれば、最終的に幸永に辿りつくんじゃね。名付けて掃除機作戦。」
「いや、三国志とかそういう感じっぽくもある。」
「協力しないぞマジで。」
「ごめんって、斎藤。」
「冗談だって斎藤。」
　このまま弄りすぎたら黙りこくってしまいそう、と言ったほどブルーなオーラを背負っている。田代と俺はわざとらしく両手で口を塞いで見せた。

　さて、本気でどうするか考えなくちゃいけない。田代は持っていた書類をペラペラと捲る。
「あ、幸永くん文化祭実行委員だね。だったら、話しかける口実はある。」
「そうか。書類について質問が…とか言ったらいいのか。」
「じゃあ、上内くん行って来て。」
「アイツ今男見飽きてるだろ。田代行って来い。」
「よし、じゃんけんしよう。」
　拳を構えた田代に俺も頷く。死んだ目の斎藤はそれを見守る。田代は言う。
「じゃあ、今度は勝った方が話しかける。一回勝負。勿論最初はグー。」
「オーケイわかった。」
　拳を光にかざしたり、指と指の隙間に見える光に目を細めたり。そんな姿の俺たちを見て、斎藤はますますバカじゃねえの、みたいな目で此方を見る。
それから、俺と田代は目をカッと見開く。
「最初はグー。」
「じゃんけん。」
「ぽん。」

　力の入ったじゃんけん。


　結論から言うと、勝ってしまった。勝ったのにこの屈辱。まただ。なんか最近俺には勝利の女神は微笑まないらしい。いや、ある意味微笑んだけどさ。なんか負けているから。嬉しそうな田代と死んだような目の斎藤を見て、俺は両手で顔を覆う。
「もし、俺が幸永の信者になっちゃったときは、殴っていいから目覚めさせてくれ。」
　そう言うと、二人は敬礼をする。俺も同じように敬礼した。
「いってきます。」

　幸永のハーレムエンドの最後のキャラクター、生徒会副会長上内十草。難易度マックスだと思うから、絶対落ちない。そう心に思って、びくびくしながらサッカーチーム四チーム分の人だかりに向かって歩き出す。
　俺は副会長の上内十草だ。何回も場数は踏んでいるし、大丈夫。俺はやれる。
　と思ったら、幸永が人だかりの隙間からひょっこり顔を出して、此方を見た。思ったよりも早く目が合う。なんというか小動物みたいな彼は俺を見てニッコリと微笑む。なるほど、確かに可愛いけど、俺の好みじゃない。俺は綺麗系が好きなんだ。
「上内先輩、ですよね。」
　なんで名前知ってるんだろう。いや、俺生徒会副会長だから知らない人に知られていることも多々ある。それほど驚かない。俺は頷く。
「そうだけど。」
「あ、テメエ、上内。なんで来た。」
　岩崎がなんか言っているけど知ったことではない。幸永は岩崎を気にしながら言う。
「ぼ、僕、上内先輩に憧れてて。お会いできて光栄です。」
　斎藤なら今の瞬間「面倒臭い」とか「怠い」とか言っているだろう。俺も気持ちが理解できた。周りの信者の目が痛い。多分今俺の顔死んでる。けど、目の前の小動物・幸永昭一郎は目をキラキラ輝かせている。
「はあ。」
「あ、あの。今お時間大丈夫ですか。」
「そうでもないです。」
「そ、そうですか。ごめんなさい。」
　しょんぼりした幸永の肩を抱き寄せて岩崎は文句を言う。
「オイ、昭一郎がこんな顔してんのに、お前無視すんのか、冷たい男だな。」
「俺、冷たい男でいいから、帰っていいか。」
「帰れ帰れ。」
　岩崎はシッシと俺を追い払う動作をする。それを見て、幸永はあからさまに泣きそうになる。
「か、帰っちゃうんですか。」
　ウルリと目が輝く。少女漫画のキャラクターの目が大きいと言う人が居るが、それに似たような人物がこの世には存在するらしい。それを見て岩崎はハッとして、また俺の方を見た。
「待て。上内ステイ。」
「おい、……岩崎お前殴っていいか。今斎藤居るし、多分俺退学にならないし。」
　うん。今殴ったとしても斎藤なら許してくれるだろう。いろいろ根回ししてくれるだろう。大丈夫。アイツも俺を叩いたんだからフォローしてくれるはず。だから、殴らせろ。
「は、斎藤。」
　岩崎はポツリと呟く。と、その声を聞いて、幸永はまた目を見開く。目、デカ。
「さ、斎藤先輩も来てるんですか。」
　あ。これは斎藤も巻き込もう。そう思い振り向くと、逃げだそうとする斎藤の手首を田代が掴んでいた。不機嫌を全身で体現するし、威嚇する猫みたいな彼の首根っこを掴んで、此方に引っ張ってくる。ずるずると引きずられる彼は小声で「関わりたくない。」だの「怠過ぎる。」と言っている。
　幸永の前に彼をおくと、岩崎の手を取り、斎藤の手首を掴ませる。
「上内。なにこれ。」
「ほっとくと逃げるから、それ。じゃあ。」
　斎藤に任せればなんとかなるだろう。そう思い、俺が歩き出そうとしたら、斎藤に手首を掴まれていて、前に進めない。無駄な攻防をやめて、俺は普通に立つ。

　つーか、橋本の話ではキャラ攻略は不本意だって言ってたじゃんか。なのになんか、妙に俺や斎藤には目を輝かせてるぞ。なんなんだこれ。別に岩崎に嫉妬されてるとかいらないから。そんな設定らないし、優越感も何もない。寧ろ岩崎の目線が凶悪過ぎて嫌になってくる。
　斎藤はむくりと起き上がる。
「幸永昭一郎。」
「僕の名前、知っていたんですか。嬉しいです、斎藤さん。」
「お前、カルト教団の教祖様みたいで、怖い。」

　あの。斎藤さん。なんでそこまでストレートに言うかな。ふと斎藤の顔を見るともうストレスのピークと言った表情。あ、俺らが弄り過ぎた。トラウマに放り込んだのが間違いだったか。
　笑顔が固まる幸永、話を聞いていた岩崎を始めとした生徒会役員たち信者も固まる。それを見て斎藤は静かに目を閉じた。

「お前のせいで生徒会役員が礼拝に呼ばれ文化祭準備が滞る。何故か風紀委員の俺も手伝わされるし、鎌田委員長に虚偽報告しろって上内に脅されるし、田代と新聞部部長にはトラウマひっかきまわしてくるし、踏んだり蹴ったりだ。…お前が言えばコイツラ働くだろうから、なんとか言え、一年。」

　あら。斎藤くんってば、ストレート。
　目に涙を溜め、きらりと光った。あ、零れる。そう思った途端、大きな目から涙が零れた。斎藤は面倒臭そうに言う。
「上内、生徒会室に戻るぞ。」
「え。」

　斎藤は俺の手首を掴む。それから強引に引っ張った。
　男らしいもので、ノンケをホモにしてしまい何度も告白されたとショックを受けていた先ほどとは比べて、随分ぶっきらぼう。言葉数少なく不満が募ると黙るという性質からは想像できないほどに、清々しい。繊細な癖に、変なところで行動力がある。

　前を歩く彼は、とても不機嫌だ。余りいつものぼんやりしている姿とは違った。


　何考えているかわからない。でも、慰めてやろう。頭を撫でようと手を伸ばすと、ナチュラルに避けられた。あ、コイツ避けた。

＊＊＊
橋本　由紀奈・はしもと　ゆきな
新聞部、二年。

幸永　昭一郎・ゆきなが　しょういちろう
生物部、一年。
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		<title>7.覚悟があるなら大丈夫</title>

		<description>

 生徒会会計１。二年、明川望。ちなみ…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 

 生徒会会計１。二年、明川望。ちなみに男。
「はあ。でも俺今日予定あるし。」
「あっても来い。」
「本当に大事な用事なんだ。本当に。」

 生徒会庶務１。二年、泉梅太郎。
「今日しょうちゃんとデートだから無理。」
「……何コイツ。」

 生徒会会計２。一年、柊為吉。
「あ、あの。俺今必死なんです。好きな子の為に過ごしたい時期なんです。」
「ああ、その言葉故に為吉ね。なるほど…じゃねえよバカ野郎。」

 生徒会庶務２。一年、金森史。
「あのさ。生徒会って結局ボランティアですよね。」
「でも入ったんだからやれよ。」
「フ…そうやって、先輩権力振りかざす人が一番醜いんですよね。」
「お前何キャラ変わってんの。」


 不思議だな。斎藤のあの吸い込まれそうな黒い目を思いだしたら、殴りたくなるのが抑えられたよ。俺ってば感情のコントロール出来てるじゃん。あれほどのクズだと思わなかった彼らを殴らなくて済んだよ。これって、斎藤マジックじゃね。俺もう兄貴と崇め奉るよ。…じゃない。
 どういうことだ。一年含めてみんなバカか。いや、男子ってバカなもんだよな。確かに生徒会の男女比可笑しいと思ったけど、まさかのこういう展開になるとは。田代を取り合って男どもがドロドロするのかな、と写真を見た姉ちゃんに言われたけど、まさかこうなるとは予想外だったよ。なんでみんな男に惚れるかな。しかも必死に囲うのかな。
 あれか、ゲームで言う。ハーレムエンド。ああ、それ。あ、まだか。俺攻略してないんだもんな。あとは、現実主義の俺を落としたら、完全にハーレムエンドってか。続編は風紀委員編とかかな。それとも体育会系イケメンの宝庫、体育委員攻略かな。
 ダメだダメだ。現実逃避はこの辺にしておこう。

「田代。俺が悪いのかな。」
 放課後。手は動かさないと仕事は終わらないから、今できることからやり始めることにする。俺の報告を聞いて、田代は思いっきり顔を歪めた。選挙したばっかりの時は可愛いと思っていた田代も今では、怒りで歪んだ顔ばかりが頭に浮かぶ。確かに俺ってば優秀だけど、田代も優秀だから結構苦労掛けてるし。
「上内も悪いと思うけど、上内の悪さが一だとしたら、アイツら五万くらい。」
「あー…わかりやすい表現。」
 怒りに震える暇があったら仕事をしたい。イライラしつつも、俺と田代は同時に息を吐いた。それから、田代は麦茶を飲みほし、俺は椅子に思いっきり腰かけてクルリと回る。
「どうする田代。」
「わかんないよ。わかんないけど、手は動かさないとヤバい。」
「そーだね。」
 お互い、もう一度ペンを手に取り、書類を見る。斎藤の方をチラリと見ると、相変わらず静かに仕事をしている。きっと、このことは鎌田先輩に言うのだろうけど。それにしてもヤバい。
「物理的に終わらない気がしてきた。」
 もう一度立て直した予定を見ながら俺が言う。田代は、両手で自分を抱きしめて下を向く。
「現実見ないとダメだよね。」
 俺はもし、このまま三人で終わらせることになったら、と一日のノルマを紙に書きだしてみた。それを見て、田代は青ざめる。俺もおそらく青ざめている。斎藤はふと顔を上げて俺の持っている紙を見た。

「バカだろ。その予定じゃ、終わらない。」
「斎藤くん。現実だってわかってるけど、今精神的にキてるからやめて。」
「うんそうだね。そうだね。だけど、辛いから今はソフトな言い方して。」
 悲鳴染みた声で、俺と田代は叫ぶ。ガタリと同時に立ち上がった俺と田代を見て、斎藤は軽くため息をつく。
「…どうするつもり。」

 斎藤の静かな目はやっぱり、いろいろ見透かされたように思えてしまう。きっと斎藤も夏休みの間、仕事を手伝うのはよかったのだろう。それくらいなら、問題ない。新学期までの遅れを取り戻せばいいのだから。でも、新学期まで、というのは幻想に過ぎなかった。
 思ったよりも頑なに生徒会室に訪れない彼らに、斎藤も疑問に思ったらしい。
 斎藤は口を開く。
「鎌田委員長も意地悪で解散とか言ってたわけじゃない。…若干私情挿んでたけど。この学校のことを考えたら、早いうちにどうにか手を打った方がいい。お前らだって文化祭成功させたいだろ。」
 斎藤の意見は、…とても正論。
 俺だって田代だって、文化祭は成功させたい。でなきゃ、いろんな時間削って学校朝早くから来て、夜遅くに帰るまで仕事はしない。手が痛くなるまで書き続けたり、続かない集中力を引き伸ばしながら仕事をしない。

 田代は斎藤を睨む。
「気持ちはわかるけど。どうしてそれじゃダメなの。」
 彼女の声は生徒会室へ響く。俺も同じことを思っている。
「ここで諦めていいほど簡単な気持ちで生徒会やってない。」
 俺の言葉に田代はハッとした。そして、定まったような目で俺を見て頷く。

 確かに初めは、成績の関係で入ったらどうだと言われた。一年の五月なんて、ほぼわかっていない状態で生徒会に入って、仕事をする。でも、驚いた。七人しかいないのに、先輩たちは学校の為に一所懸命仕事をする。学校のいろんなことを教えてもらった。教えてもらうたびに、学校が好きになった。
 文化祭は一番学校のいいところを一般の人に見て貰える場。一つの部活じゃなくて、全体を。みんなを。

 それを成功させたい。勿論、俺たちの手で。

 斎藤は口を閉じる。それからうっすら微笑んだ。
「だったら、協力者を仰ごう。」
「…だから、風紀委員に頼るわけにはいかないの。」
 田代は少し泣きそうになりながら言う。斎藤は、首を振る。
「違う。風紀委員じゃない。」
「じゃあ、誰。生徒会の威厳が無きゃみんなついてきてくれない。あんまり、友達とかには言えないし。」
「そうじゃない。とっておきの協力者。」
「先生もダメよ。迷惑をかけちゃいけない。」
 田代の言葉に斎藤はまた首を振る。

 歌でも歌うよう、彼にしては陽気な風に言う。


「一年三組、幸永昭一郎だよ。」


 一年三組、幸永昭一郎。
 俺たちの一つ下の後輩。白い肌、明るい髪。本人も明るくて、顔も整っていて可愛いと評判な一年生。そして、恋愛ゲームで言うと、主人公のポジション。

 そう、岩崎たちが恋をしている、その男子生徒。


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		<dc:date>2018-10-19T21:42:32+09:00</dc:date>
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		<title>6.なんとしても</title>

		<description> 元々始業式にある筈の生徒会長の話、アレ…</description>
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			<![CDATA[  元々始業式にある筈の生徒会長の話、アレは岩崎に頼むつもりはなかった。別に副会長が挨拶してもいいわけだから、俺が壇上に上がる。通例通り二学期頑張ろうってことと、文化祭のことを話して話を終わる。いつも通り警備のように体育館の壁に並ぶ風紀委員の先頭で、鎌田先輩は俺を睨む。
 もう生徒会を引退して、三年生の列に並ぶ元生徒会長の向田加奈子先輩も、俺の顔を見て、心配そうな顔をした。

 それにしても他の生徒会メンバーは、ノー天気だった。

 教室に戻る途中の人ごみの中、俺の両隣に山下と池井が来る。いつも思うけど二年の風紀委員の山下と池井は出しゃばり過ぎだと思う。次期風紀委員長、次期風紀副委員長と名高い二人だからなのか。
「素晴らしい挨拶でしたね、上内くん。」
 前から思ってたけど、池井は何故同級生にも敬語なんだ。
「あ、ありがと。」
「会長の話じゃなかったんだ。」
「別に生徒会からの話だから、特に決まりはない。」
「ああ、知ってるぜ。」
「僕だって知ってますよ。」
 知ってるなら言うな。前から思ってたけど……やっぱりコイツラ腹立つ。そして、俺を弄ってる時のコイツラはいい笑顔だ。

「こっちは生徒会のお蔭で斎藤の仕事まで回ってきましたからね。」
「ま、あいつの仕事如きすぐに片付けれるけどな。」
「けど、斎藤くんだって風紀委員の自由役員。…今、斎藤くんのお蔭で生徒会が成りたててるってこと忘れないように。」
 なあ、斎藤。お前と同じ委員会の人、なんでこんなに腹が立つだろうな。斎藤は普通なのに。
「おそらく、斎藤くんは次期風紀委員会の書記になる人ですからね。」
 あれ、彼の風紀委員会での立場が本当にわからない。いじめられてると思ったけど、結構取り立てられてた。
「それって凄いの。」
 そう尋ねると二人は一気に俺を睨む。
「何様のつもりですか。凄いに決まってるじゃないですか。」
「そりゃ、俺ほどじゃないけど、鎌田委員長にだって取り立てられれるんだ。一年の時からコツコツやってきた努力家だ。」
「斎藤くんをバカにできる立場でもないのに、何を言っているんですか。」
 なるほど。斎藤はツンデレ的に好かれているのか。今、斎藤の立場がなんとなくわかった。道理で、彼が風紀委員の仕事をしている場には大体この二人が居る筈だ。なんやかんやで三人仲良しなのな。最近短い期間で何度も風紀委員に嫌味を言われるので、こんなことも考えれるくらい冷静に慣れてきている気がする。
「そーなんだ。」

 そんな好かれている斎藤を生徒会に回しているってのはやっぱり、異常事態。ふと、窓の外を見ると向かいの棟の下の階が見えた。そこを何故か岩崎が歩く。
「ちょ、上内聞いてるのか。」
 何か文句を言っていた二人を無視して、窓の縁に手を当てる。岩崎は何処かに向かっている。確か、あそこは一年の教室がある。始業式に俺が挨拶しているということに、ツッコミすら入れないほど。
 追いかけていこうかと思ったがやめておく。俺はそのまま二年四組の教室に入る。

「あ、ちょ、こら。」
 山下の声に気が付き、そちらを向く。
「あれお前ら三組と一組じゃね。」
 三組の山下と、一組の池井が顔を真っ赤にした。いやまあ、四組までついて来たら行き過ぎだもの。俺は笑う。
「ああ、ここまで送ってくれたのか。」
「煩い。」
 それだけ言って教室の奥に入ると二人は顔を真っ赤にしたまま元の道を帰っていく。
 他のクラスの教室に入ってはいけないという校則があるので、二人は教室までは入って来ない。風紀委員が憎たらしいだけなのは、こういうルールをきちんと守るところだろう。


 席に座る。さて。
 今から俺は考えなければならない。放課後までに。今からホームルームが一時間。昼飯を食べてもう一時間。その後、放課後。それまでに、他の四人を連れ戻す方法を考えなければいけない。文化祭まであと一か月とちょっと。余り生徒会のことに時間を裂きたくない。
 なるべく早く連れ戻し、バカ生徒会長をなるべく早く説得する。文化祭までの間だけでもしっかり働いてもらって、あとはどうするかは本人たちに決めてもらえばいい。でもとにかく何が何でも文化祭は成功させたい。
 ここまで天敵である風紀委員が協力しているのだ。


 いくら、生徒会が総選挙となったとしても、文化祭くらいは終えさせてくれ。

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		<dc:date>2018-10-19T21:40:37+09:00</dc:date>
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		<title>5.けれど現実はこうだった</title>

		<description>　新学期早々、風紀委員会は校門で持ち物…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 　新学期早々、風紀委員会は校門で持ち物服装検査を行うらしい。だから、朝は生徒会室へいけないと斎藤から連絡があった。いや、抜き打ちなのだから俺に明かしたらダメだろ、と思ったのだが、斎藤が言ってきたのだから黙っておく。
 風紀委員は朝早い人が多い。8時半が始業だというのに、昨日仕上げた資料のチェックをしようと思って、7時に訪れたら校門前に既に風紀委員が集まっていた。その中に斎藤の姿もあった。常にぼんやりしているから、朝とか弱そうなイメージを持っていたが、欠伸もせずいつも通りだ。思ったよりも朝強いのかもしれない。

 風紀委員は夏の制服に「風紀委員会」と書かれた赤い腕章をつけて、校門の前にいた。皆それぞれタオルなどで汗を拭きながら。水分補給もしながら、黒いバインダー片手に生徒を呼び止め、持ち物検査や服装検査をしている。朝からご苦労なものだ。
「おはよう。」
「あ、上内。おはよう。」
 斎藤はバインダーを抱えて此方を見た。それから、頷く。
「鞄。」
 相変わらず言葉数少ない。俺は用意された机の上に鞄を置いて、チャックを開く。いつも大きめのエナメルバッグを使っているけれど、今日は授業もないし生徒会関連のものしか持っていない。
「要らないモノ持って行く余裕もねえよ。」
「なんか朝なのに終電に乗るサラリーマンみたいだな。表情が。」
「逆になんでお前はそんないつも通りなの。」
「省エネモードは持続する。」
「なるほど。」
 つまりは常に省エネモードだから疲れていないのかもしれない。よくわからない発言によくわからないテンションで頷く。と、そんな彼の隣に二年の風紀委員の池井和が立つ。斎藤よりも頭一つ分くらい小さい彼は、斎藤を思いっきり睨んだ。
「斎藤くん。無駄口叩かないでください。」
「喋れって言ったり、喋るなって言ったり。」
 斎藤は息を吐く。それを見て池井は何か言おうとしてやめる。やっぱり斎藤風紀委員でいじめられてないか心配になってきた。
 池井は此方を向く。
「で、新学期から本格的に文化祭準備を始めるのでしょう。大丈夫なんですか。生徒会は。」
「なんとかするよ。」
「ほう。それは期待しています。」
 〈なんとかなる〉わけないから、〈なんとかする〉。風紀委員は真面目だから定期的に嫌味と共に重要なことを言ってくれるから有難い。お堅いからあんまり好きじゃないけど。
 池井は腕組みをして、ため息をついた。いつも思うけど、なんか風紀委員って偉そうだ。池井は斎藤の腕章を握り、軽く引っ張る。
「折角監査しているんです。ちゃんと委員長に報告してくださいね。」
「あ、うん。」
 斎藤はいつも通り静かに頷きながら言う。
「だから、斎藤くん。声張って下さい。」
「…喋れって言ったり、喋るなって言ったり。」
「それは時と場合によります。」
 斎藤の立ち位置がよくわからないが、仲はいいらしい。


 生徒会室は校門に近い。廊下の方の窓から、校門の持ち物服装検査の様子は容易に確認できた。生徒会室のカギを貰って、中で作業をしていると、暫くして田代も来る。特に呼んだわけではないのだが、彼女も始業式の前に確認しておきたいことがあったらしい。
 特に何か言うでもなく、確認も終わり、そろそろ八時が来るのでお互い教室に行こうかと思ったくらい。
 大体の生徒は今の時間に校門を通るのだろう。風紀委員は忙しそうに走り回っていた。そんな中、おそらくあれは、山下と池井だろう。生徒の前で何か怒鳴っている。
 田代は鞄に筆箱を入れながら顔を上げる。

「何アレ。」
「さあ。…風紀委員に盾突いてるのかな。」
「よくやるよね。」
 生徒会と風紀委員会は犬猿の仲だというが、いつも仲が悪いわけじゃない。そりゃ、去年の生徒会長と鎌田委員長は随分仲が悪くて、特に何もなくても張り合っていたらしいけど、俺や田代はそこまででもない。風紀委員が言うようにきちんと校則は守るし、それほど取り立てて問題行動も起こさないので、生徒会関連以外では特に何も言われない。生徒会の奴らもほとんどそうで、基本的に怒られているのと言えば、現生徒会長の岩崎晶くらいだろう。
 …ん、岩崎？　
 何か思い当たることがある。今日岩崎を放課後なんとしても生徒会室へ連れて来て仕事をさせるつもりだ。それは田代も承知済み。だけど、朝は何も言っていない。そりゃ、連絡のメールはしているが、それ以外特には。
 でも、先に風紀委員が岩崎に突っかかってたら。

「へえ、今の生徒会が風前の灯だってんのに、盾突くのかよ。」
「今までの態度でどうにかなると思ってるんですか、岩崎会長。」

 山下と池井は結構声が通る。鍵を閉めようと廊下に出て、聞こえてきた。思わすカギを落として、振り向くと同じように田代も振り向いていた。
「……上内。」
「え、マジで。」
 斎藤につっかっかかるのならいい。でも、お堅い風紀委員な山下と池井に突っかかるなんて。田代はニッコリと笑う。
「いやいや。聞き間違いだよ。まさか、岩崎じゃないでしょ。」
「だよな。」
 そう思いつつも鍵を拾い上げて施錠してから、校門が見える窓にしがみ付いた。田代も同じように。

「はあ。特になんも違反してないのに、そんないちゃもんつけられる意味わかんねえんだけど。」

 この太々しい声は間違いなく岩崎。俺と田代は絶句した。あのバカ今までの日常なら風紀委員の嫌味に嫌味で返してもまあなんとなかったけど、この状況でそれを言うか。俺は田代に鍵を握らせる。彼女が驚いて瞬きをしていたが、そんなことどうでもいい。早く止めないと厄介なことが起きそうで仕方ない。嫌な予感しかしない。
「田代それ、職員室へ返して来い。」
「え。」
「あのバカ止めてくる。」

 それだけ言って、玄関へ走る。

「上内…。」
 いつもの状態なら、風紀委員の嫌味、岩崎の嫌味、で終わっただろうが。生徒会に監査が入るという異常事態。確かに生徒会的には斎藤のお蔭で助かっているからそれほど危機感は沸かないけれど、風紀委員からしたら相当な異常事態と認識しているだろう。
 そんな状態で、風紀委員はいつも通り岩崎に返すだろうか。んなはずねえだろ。
 斎藤がなんと報告しているかわからないが、夏休みの間、一度も生徒会室に彼が顔を出さなかったことは伝わっているだろう。それくらいならいいやとも思っていた。過去にも大学の研修旅行に参加した先輩やオープンキャンパス、夏期講習などで夏休み中会長がいないことなんて結構あった。
 ただ、遊びでってのは聞いたことがない。しかも、その間の仕事を他の二人に全面的に任せるって方向で始末をした会長もアイツくらいだろう。
 そんなの見ていたらどんな人間もいい加減にしろよって思うだろう。況してや再三の勧告すら無視しているのだ。監査まで入れて、新学期になって反省しているのかと思ったら、いつもの太々しいまま。
 いや、誰だって腹立つだろ。確か斎藤の仕事は山下と池井に振り分けられたって聞いたし。

「うっせーな。監査とか、なんで俺の知らねえ間に入れてんだ。」
「知らないんだ。そりゃ、一度も来ていなかったらしいしね。」
「お前らに関係ねえだろ。」

 だから黙れ。これから取り戻せば、食券五枚奢らすだけで許してやるから。そう思って、岩崎の前に立つ。
「あ、上内。おい、監査ってどういうことだよ。」
「後で説明してやるから、今は取り敢えず謝っとけ。」
「はあ。なんで。…つーか、お前か、監査許したの。」
 コイツは風紀委員の監査が腹立たしいらしい。風紀委員としては手伝ってやってるくらいの気持ちだったのかもしれない。監査が来てから、向こうからしたら仕事がスムーズに進んでいるからな。斎藤の仕事量は知らないだろうが。
「あのな。元々お前が連絡したのに返事もしないからだろ。」
「ああ連絡。うっとおしいくらいにしやがって。」
 面倒臭そうに此方を睨む彼に、頭の中でブチリと何かがキレた。イライラしている山下と池井や、それを見守る一般生徒の顔が見えたがそんなの関係ない。

 思いっきり息を吸い込んで、吐き出す。

「うっとおしいじゃねえよこのバカが。自分勝手なことばっかりいいやがって！！　」
「…なんで怒鳴るんだよ。意味わかんねえよ。」
「意味わかんねえって本気で言ってんのか。何考えてんだお前。今の状況本気でわかってないだろ。」
「アタマが可笑しな、上内が勝手に怒鳴っている。」
「ああ、バカな岩崎クンは本気でバカだったってことか。」
「バカバカうるせえよ。」
 岩崎も声を張り上げる。あのムカつく鼻柱を殴ってやろうか。
 拳を握りしめた時、その手をそっと誰かが触れる。思いっきりそちらを睨みつけると、いつも通り冷やかな無表情な斎藤が此方を見ている。
「は。」
 吸い込まれそうな黒い瞳には、凶悪なくらいに睨みつけている俺の顔が映っていた。彼は静かなハスキーな声で呟いた。
「殴るのはいけない。」
 思わず黙る。それから、斎藤は岩崎を見上げる。俺の手首を掴み、岩崎の手首にも触れる。
「んだよ、斎藤。」
 相変わらず怒気の籠った目と声な岩崎を斎藤は静かに見る。それから、山下と池井の方を見る。
「二人、借りる。」

「え、斎藤。」
「借りるってどういうことですか。」
 ポカンとした山下と池井に斎藤はただ頷く。そして、俺と岩崎を掴んだまま走り出す。



「斎藤、え、何。」
「何この状況。」
 斎藤に手を引かれながら俺と岩崎は走る。手を離そうとするが、意外にも握力は強いらしい。さっきまで怒っていたと言うのに今は素直に驚くしかない。俺も、岩崎も。
 校門が見えなくなって、連れて来られたのは北棟の裏。ウチの高校の告白スポットとなっている場所に、一人の女子が立っていたが俺たち三人を見て、ギョッとして退散していた。あれって、呼び出し待ってたんじゃないか。
 斎藤は周りを見て誰も居ないとわかると、手を離す。結構痛かったから俺も岩崎も自分の手首を押さえた。斎藤は振り向いて、腕時計を確認すると、相変わらず何を考えているかわからない表情で言う。
「岩崎。俺がさっき話してた風紀委員会の監査役だ。」
「は。」
 何が言いたいんだ。岩崎の口から声が漏れた。走ったばかりで心臓がどくどくいっているが、先ほどの怒った時の鼓動とは少し違った。さっきと比べて少しだけ冷静に戻る。
「俺は鎌田先輩に、三つ。報告した。」
「何。」
 少し怒った岩崎の声。ただ、俺と一緒で、さっきに比べて目は落ち着いている。ざわめきから遠い、静かな場所。木々の風で揺れる音が一番大きな音で、自然と自分の声も少し小さくなる。斎藤は頷く。
「一つ目は、俺が監査に入ってから生徒会には上内と田代しかいない。二つ目は、上内と田代は目標や一日のノルマを決めて仕事をしている。三つ目は、他の来ていないメンバーに関しては新学期になってから対応するということ。」
 斎藤に仕事をさせていることや、岩崎たちが音信不通なことは言わなかったらしい。斎藤が三つと言ったらきっと本当に三つだろう。

 岩崎はいつも通り上からな感じで腕を組んで、斎藤を見下ろす。
「で。お前は何をしろって言われてるんだ。鎌田の犬。」
「俺は猫派。」
「知らねえよ。」
 斎藤ってどんな状況でもテンション変わんねえよな。自分よりも十センチも身長高い凶悪な表情の男に対してもいつも通りだ。俺も岩崎は慣れたけど、冷静になってきたらコイツは凶悪過ぎると気づく。
「委員長には別に何も言われてない。報告しろとだけ。」
「へえ。で。何。」
「…状況わかってないのか。」
 困ったように眉を下げた斎藤に岩崎は眉間のシワを深める。

 そっから、壁ドン。うわあ、日常生活で壁ドンしてる人初めて見た。というか、俺凄く冷静になった。斎藤は北棟の壁に背中を預けたまま岩崎を見上げる。岩崎はニヤリと笑った。
「何。お望みならば、お前を可愛がってやろうか。」
 岩崎は凶悪な顔だが、イケメンだ。顔が整っている。そんなコイツが壁ドンしながらそんなことを言うと、どうにも官能的に聞こえる。だが相手は斎藤。
 表情すら変えずに言う。
「そういうの要らない。」
 それから、サラリと抜け出す。そして、岩崎の隣に立つ。岩崎も壁から手を放した。

「今の生徒会の問題、…岩崎は知らねえだろ。」
「聞きたくねえよ。どうせ、小姑みたいに細かいの言ってくんだろ。」
 いや、俺も鎌田先輩は小姑みたいって思ったけど、お前は言うなよ。

「文化祭一か月前にしては仕事が遅いこと。」
「ほら、やっぱり。」
「生徒会長が新学期まで生徒会室に寄りついていないこと。」
「うるせえよ。んなことお前に関係ねえだろ。」
「…生徒会七人中二人しか働いてないこと。」
「他の奴のこと俺に言われたくない。」
 斎藤は少しだけ眉間にシワをよせる。
「その五人誰一人が一度も生徒会室に行っていないこと。」
「一度もなわけねえだろ。」
 誰か、向かってるだろうってか。俺以外がなんとかしているだろう、ってか。斎藤は岩崎の目を真っ直ぐ見た。
「その五人がみんな、一人の後輩に対して恋煩いをしていること。」
「お前に関係ねえだろ！！　」
 岩崎は大声で叫ぶ。斎藤は相変わらず冷やかに言う。
「そして、それが、生徒会役員だと言うこと。」
「鎌田の犬の分際でうるせえんだよ！！　」


 完全に頭に血を登らせた岩崎が斎藤の胸倉を掴む。表情一つ変わらない斎藤にまた眉間のシワをよせた岩崎は思いっきり引っ張る。このままじゃ殴りかねない。俺は思わず駆け寄る。
「要はお前を黙らせればいいってんだろ。わかったよ。望みは何だ。ん？　それともお前が報告できないようにしてやろうか。」
「そういうことじゃない。別に恋煩いしててもいいけど、仕事はしろって言ってるんだ。」
「どうせ監査ってみてるだけなんだろ。代わりにお前がすればいいだろ。」
「あいにく俺は一人しかいないから、五人分はカバーできない。」
「他のヤツのことなんて知らねえよ。」

 俺は斎藤と岩崎を引き離す。
「いい加減にしろよ。お前これだけ丁寧に説明されてわかんねえのか。」
 その言葉に岩崎は俺を睨みつける。
「お前副会長の癖に、コイツの味方するのか。意味わかんねえ。」
「だから、味方とかそういうことじゃなくて。」
「俺に言う暇があったら他の四人連れ戻せよ。」
 その言葉に俺は口を閉じる。なるほど、四人を連れ戻せばいいのか。素直に口を閉じた俺を見て、乱れたシャツを整えていた斎藤は瞬きをした。そんな俺たちに岩崎は不審に思いつつも言う。
「ああ。わかった。他の四人連れ戻したら、いいのか。」
「…はあ。やっぱ意味わかんねえ。お前絶対風紀委員に毒されてるって。」
 コイツは自分が冷静なつもりなのだ。まあ、俺も自分が冷静なつもりだからお互いさまかもしれない。文化祭までの予定組み直しだけど、今のところギリギリではあるが遅れてはいない。
「言っとくけど、その監査がいなくなるまで戻る気ねえからな。なんで態々風紀委員の顔みなきゃなんねえんだよ。」
「…上内、俺帰った方がいいか。」
 斎藤の言葉に俺は首を振る。
「今の岩崎が居るより、斎藤が居る方がだいぶマシ。」
 岩崎はフッと笑う。
「ああ、なるほど。どおりでお前はその風紀委員を監査に入れたのね。」
「はあ。」
「物分かりいいフリして、上内誑し込んだのか。斎藤だっけ。意外とビッチだな。」
 …コイツ、バカだ。
 いや、お前じゃねえんだし、俺ホモではねえわ。ジト目で岩崎を見ると彼は妙に余裕そうに鼻で笑う。いや、お前確かにイケメンだから絵にはなってるけど…勘違いだからな。

 ふとチラリと隣に居る斎藤を見ると、彼は死ぬほど不満げな表情で岩崎を睨む。さっき怒鳴られたときも変わらない無表情だったのに。顔の明度がだいぶ低くなってるし、眉間のシワ半端ないし、今までのぼんやり顔が忘れてしまうほど、凶悪な睨み顔。全身から不満を表す。
「そういうのが一番ウザい。怠い。うっとおしい。お前がホモだからホモって思うな。」
 うわあ。今までの掠れ気味のか細い声とは違う。確かにハスキーだけどこれだけ低く静かな怒気の籠った声、斎藤も出せるんだ。と俺が現実逃避したくなるくらい。
 岩崎はピクリと肩を揺らした。斎藤は静かに自分の腕時計を確認する。
「さあ、ホームルームが始まる。教室戻るぞ。」
「……ああ。」
「おう。」
 驚きつつ俺と岩崎は答えた。

 とにかく、俺が思った以上に岩崎はあの後輩に固執していて、思った以上に単純な話ではなかった。そして、風紀委員も本気で生徒会を潰すつもりなのだが、斎藤のお蔭でなんとか保たれているということ。

 実は今の生徒会、本当に、風前の灯なのかもしれない。

＊＊＊
池井　和・いけい　かず
風紀委員、二年。

岩崎　晶・いわさき　あきら
生徒会会長、二年。
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